mimi's world * HOPE and DESIRE

_______ BE-lie-VE * be-LIE ve * believe...the SHAMs for heart healing * mimi's world-7 _______

To be my Grace - OTHER WORLD. XXII 

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さっき見ていたFinding Beauty バージョンのカインヒール。
京子と2人でセット交換休憩に何気なくキャストが向かう癖の付いている、スタジオ隅の休憩場所。
どうにもこうにも、近衛監督。
Tragic Marker の CMだけ実は流しているようだった。

今さっきの撮影は、息子のシーザリオンをお腹に宿した時だと理解できたものだった。
実際に男女関係にて、お腹に宿してしまった彼女も、画面を見ていて思っていた様だった。

何度も繰り返しCMが流れているので、座らせた実際の身重の彼女の後ろのモニターを見ていたら、繰り返し色々なバージョンが流れてきていて、なるほど・・・・

・・・だったか。

って思った自分。
でもSarabandeバージョンの後に直ぐに流れてきた、モニターの中の自分を見ていて、なにやらの思いが込み上げてきていた。



(・・・復活した心 )

無念の想いを残して死んだシーザーの、その無念はこの愛にが一番だったのか・・・

愛国心と自分の理想を広げたい想いと、彼女との結婚は繋がっているけれど、彼女への本心からの想い・・・恋に落ちたシーザーが自分の恋心も利用するという事なのか・・・

自分が演じなければ成らない、無念が4つもある事を考えると、ど~も難しく考えすぎなのか?と思う。

しんでも死に切れない無念の思いと、ミイラにされることなかった国王の処刑。


復活するな。と言われた様な、でも国に貢献し続ける彼女の純真さには、シーザーも共感しているに違いないと考えた。

だからこそ、周りが見えない程、愛し合っていたのか・・・



フムフムと、なんとなく考えながら


_____ 準備もう少しいいですか~・・・


ってな、スタッフの声が聞こえて京子の腰を抱いて休憩所に行った。



「 じゃぁ、この船旅前のシーンからか・・・ 」


それは、ファロス島に、戦いに向かったシーザーの帰還シーン。

画面の中は豪華船であったけど、セットの中はブルーの箱だったり階段だったり、まぁそんな色んな物が取り払われて、クレオパトラがシーザーを見送った海に突き出た窓から帰還する姿を見るというもの。

船の炎上に海に飛び込んで、ローマの政治に必要なものを守る為シーザーが海を泳いで島に向かうというもの。これはイルカと一緒にヤッホ~とかって泳げるぐらいの水槽で。と聞いていた合成だったので、違う日の撮影だった。


でもこの時、勇ましく飛び出て行ったシーザー。

シーザーは香油が大好きで、敵との戦に赴く時にはその戦闘意欲を高める為に、全身にアンバルという香油を塗らせ、戦闘中、心が折れる事なきようその香りで昴奮させたと言われている。その熱い戦闘中の体温で温められた香油が体中に立ち昇ると、戦意を上げて敵の返り血の忌まわしい匂いを消し去る効果を期待してのものだったらしい。

濃艶な香りであり、甘く、艶かしく、人を酔わせる、恋の媚薬の香り。


・・・って、そんな事と言われましても、嗅いだ事のない俺。

でも彼女は・・・


「 うふふ。 」


椅子に座って俺を見ながら微笑んでいた。


まぁまぁの雰囲気をと思い、香りの伝わらない画面。
でも共演者には香りはもちろん解かり、演技の足しになるかな?とは、自分の演技にも思う事だった。


スゥーっと京子が香りを嗅いだら・・・


「 いつもの蓮の香り・・・」


「 そう・・好き? そうだ、香り・・・」


最近気持ちが悪かろうと、香りに対して敏感な彼女に合わせて、自分が好きな香りのトワレもボディクリームすらも着けていなかった。

( だって寝起きに発覚した その事だったので・・・)


「 うん。そういえば・・・大丈夫みたい。 」


そう微笑みながら上半身裸で大好きな香りのボディオイルを薄く塗っていた。
つやっ艶~!と上半身を見て両手にオイルを擦り合わせ、背中に薄く塗ってくれる彼女の手の体温を感じていた。


あったかいな~

そう思ったのは、やっぱり妊婦さん。
体温が高いらしい、そのぽかぽかのお手手で優しく塗ってくれる。


「 あっ、敦賀君。準備OK? 」


メイクさんも衣装さんも寄って来て、あ~敦賀君の香りがする~~・・・とウットリしているその声に、背中のぽかぽかお手手がぎゅいっとツボを押してきた。

油断していたので、敵に刺されるとはこういう事だな。とも・・・
メイクさん達がウットリしてくれている間に背中に寄り添い・・・


「 だって、この香りに包まれて、愛されてるって感じてたんだもん。 」


そんな事をぼそっと背中に寄り添って言われたら・・・

ぎゅ~って抱きしめてしまう。


(・・・まぁ、さっき腕を組んで我慢したけど・・・そこまでならばいいか。 )

本当ならばそのまま連れ去って、もっと愛してあげる。って言いたくなるじゃないか。と思うも出来ない撮影所。


何で出来ない。


「 はいはい。お仕事中ですよ~・・・」


腕の中から彼女の声が聞こえ、はい、そうです。と自分でも頷き、抱きしめていた腕を放した。

目を瞑り、ふ~ぅ・・・と冷静になろうと思いながら、メイクさんにシュッシュと霧吹きを掛けられてお仕事がんばります。と演技に向けての戦意を表に試みた。



________ セット準備OKで~す。
________ は~い、こちらもいけま~す。


2つのセットから、スタッフの声が掛かると・・・


_____ はい、敦賀君もOKかな?


こちら側でも、最後に衣装さんに着替えさせられて、頭からも水が滴る男に成った。




「 それじゃぁ、それぞれセットに入ってください。 」

監督からの声に、別々のセットに入っての同時撮影に成った。



いいかな・・・


________ 「 よーい・・・」


カチッ・・・




クレオパトラが深刻な面持ちで見詰め続ける窓の外・・・

愛する人が向かった先の水平線には、陽が傾いて、ただ一本の緋色の線が伸びているだけ。
その緋色に染まる色の海には・・・

赤い物が海水に混じり、縞の様な幾筋もの線を波状にゆらゆらと動かしていた。

クレオパトラは自分の瞳の色の海に起こるこんな現象に、緋色の夕日が完全に消えても、その色が月明かりに浮かんでいるのに はっと目を凝らしていた。


「 どうかご無事で・・・」


シーザーの置いて行った黄金の月桂樹の冠を胸に抱き、青い海に揺られる緋色の縞は、戦闘に破れた者達の血の色だと気が付いて震える瞼に涙を流すのはまだと、堪えていた・・・時だった・・・


________ コンコン


女王様・・・


ドア向こうから声がしたと振り返るとそのドアの向こうから、喉が張り裂けんばかりの大きな声で聞えてきた。

_____ 我が軍。大勝利でございます。

    
その声を聞いてそのまま膝から力が抜けた様に、へなへなとクレオパトラは座り込んだ。



目を瞑ると見えてくる・・・


あの愛しい人が向かう姿。
勇気と自信に満ち溢れ、自分の元に必ず帰って来ると約束してくれた勇ましい姿。

涙が嬉しさで込み上げてきたけれど、悲しくないのに泣きはしないと、女王として国の勝利をも祝う気持ちを持たねばと目を瞑り、自分の喜びの方向を変えようと努力する。


_____ クレオパトラ様。


お付である乳母のタクハエトの優しい声もが、ドアの外に聞こえ・・・


_____ シーザー閣下がただ今、こちらへ向かっているそうですよ。


その声に、はっと目を開けて自分の腕の中に残る彼に抱きしめられていた証である、シーザーの香りを胸一杯に吸い込みながら、窓の外に顔を向けた。


その先には・・・


先頭に愛しい人が、自分の兵を後ろにたくさん連れて、こちらに向かってくるところだった。


海で戦ったのだろうか・・・


そう思わざるを得ないほど、シーザーは香油を塗った肌から玉の様な雫を弾かせて、髪からも雫を滴らせながら歩いていた。

装備の全てを外した姿に、鎧兜の重みで沈まない様にだろう。と考えられるのは容易だった。

その強靭な身体の肌から、滴り落ち、香油の弾いた玉の粒の様な雫・・・



自分の瞳の色と同じと、亡き国王も、国民も、そして愛しい今窓から見える人も言ってくれていたその蒼い海の雫・・・

海の中から守りたいと想う心が、祭儀神である我がイシス神に伝わってくれたと信じたい。

クレオパトラはバルコニーに出ていると、津波の様に聞えてくる雄叫び。そして死者が出ているのであろうと思われる、血生臭い海からの風の音と共に聞えてくる、金属武具の打ち合う音を聞いていた。

ただただ その音と匂いの中に、ひたすら祈り続けたクレオパトラ。
心配していたのは、自分の国の兵に市民も、エジプト我が国の為に戦に出向いたローマ軍の兵士達にも、そして もちろん・・・

  ・・・心から愛しい人・・・


全ての人にイシス女神として見守りたいと祈っていた。

その緊張が突然緩んだのか・・・

愛しい人が先頭に立ち ここに向かってくる姿を見ていてた。

玉の様な蒼い海の雫を滴らせるその水滴は・・・
緋色の水平線が消え、空に星が煌き始めたその星の様に月の明かりに輝いて
しなやかで強靭な肌からはじけ飛ぶ様に、星をその後ろに纏って見えていた。


マントを着けていない・・・


戦に出向く時に着けていた、緋色のマント。
今の姿は、緋色のマントの代わりに弾け飛んだ雫が作る 星が作ったマントを靡かせ、こちらに急いで来る姿。

シーザーの置いて行った彼の黄金の月桂樹の冠を胸にぎゅっと抱きしめると、シーザーの大好きな香りも自分の周りに立ち昇っていて・・・

堪えていた涙が止め処なく溢れてくると、今まで見えていた勇ましい姿が霞んで見えなくなっていた。


_____ 女王様。シーザー様はご帰宅ですが、
   港にこんな物が流れ着いておりました。が・・・



「 入りなさい。 」


動けない程気が緩んだのか、シーザーの黄金の月桂樹を胸に抱き、涙の溢れる海の色と同じ瞳をドアの方に一瞬だけ向けた。

埃と砂にまみれたエジプト軍の指揮官を引き連れて、タクハエトが部屋に入ってくる。

その間もクレオパトラは、窓の外のシーザーの姿を見続けていた。
疲れた様子と喜びに勇んでくる姿と・・・そして、傍に近寄ってきたシーザーの表情は遠くに見えた姿とは違い、勝利に歓喜している様な微笑みは皆無だった。

その姿と表情の違いにクレオパトラは、彼の心に何か引っ掛かっているのだろうと察知できるほど、数ヶ月という短いけれど甘い夫婦生活に彼の心を感じる事が出来ていたのは、国を考える女王としてからの経験ではない・・・ただ1人の異性を愛する一人の女性としてのものだった。


乳母が引き連れてきていたドアの傍で跪き頭を垂れている指揮官。
指揮官が部屋に入ってくる前に、その手の中に持っている濡れた物は、ハッと目を引く物で、指揮官が広げて見せる事無くとも、何であるかは判っていたけれど・・・


「 どうしました? それを・・・」


乳母と指揮官は2人で、その濡れた物を広げ始めた。

その広げたものは・・・


無数の矢に襲われた証拠。たくさんの矢に狙われ穴がたくさん開いている、シーザーの緋色のマント。
海から上げられたそのマントは重そうに水を含んでおり、絞るなどという行為をしたら、シーザーに殺されてしまうのを躊躇ったのろうと察知して見えるほど、ぼたぼたと海の水滴を落としていた。


赤い・・・


自分が嗅いだ血生臭い戦の海の香り。それを思い出して・・・
赤い縞の出来ていた波間を思い出すと、滴っているその水滴の色にも納得が出来るほど、その緋色のマントは血を含んだ海水を滴らせていた。


「 あぁ・・・」


命からがら船の上での戦闘から抜け出し、それでも指揮をとり勝利に導いてくれたシーザーの、エジプトへの愛を感じ取って、クレオパトラはまた涙に眉間を寄せていた。







_____ 監督、カットかけます?

_____ いや、このまま回してみて? CGの方は?重ねられる?

_____ はい、大丈夫っすよ。今のところ・・・


一つのセットの中から出ていいのかどうなのか躊躇っている敦賀君に、指でクレオパトラのセットの方に入る指示を出した。

頭からポタポタと水滴を落とす ずぶ濡れの敦賀君は、さっと顔にへばり付いている前髪を両手で後ろにかき上げプルプルと左右に頭を振り、自然に戻した。


( う~ん・・・麗しいとは・・・こういう事か・・・)

カメラが向けられていないのに、その端にいるだけでも存在感に光っていると思いながら見ていると、隣のクレオパトラのセットの端にスタンバイしたので、目で合図し指で位置を指示した。

そのクレオパトラのセットの方・・・






_____ こちらをいかがされたら、よろしい・・で・しょう・・・


「 そのような物は、即刻処分を・・・」



クレオパトラの涙の溜まった目には、緋色のマントの向こうに見えていた。


_____ コツ・コツ・コツ・・・


後ろから掛けられた声と足音。エジプト軍の指揮官とクレオパトラの乳母は後ろを振り返えると、
ドアを開けたままの部屋に、雫を滴らせながら入ってきたシーザーの姿に、跪き頭を下げた。


「 それでは、シーザー閣下の申し付け通りに・・・」


クレオパトラが乳母たちに声を掛けても、頭を下げたまま。
その頭を下げたままのエジプト軍指揮官の前にシーザーは立ち、指揮官の肩に手を置いた。
ビクッとした指揮官ではあったが、優しく置かれたシーザーの手に、その顔を上げた。


「 申し訳ない。 」


_____ いえ・・・


この会話の意味が、クレオパトラにはマントの処理だと思っていたが、続けられたシーザーの言葉は、クレオパトラの方に視線を向けて話された。


「 エジプト指揮官長である、クレオパトラの共同政治統治者。
  弟君のマグス・プトレマイオス13世王は、今だ行方不明の故・・・」


_____ 存じ上げております。
   我がエジプトを守ってくださったローマ軍には、心よりお礼申し上げます。
   つきまして、マグス国王の生死が判りましたら・・・


指揮官の言葉は乳母も伝えられていたのだろう。
乳母も顔を上げると、そこに居た指揮官、それにシーザーも、皆が窓際にいるクレオパトラに視線を向け、

そしてシーザーに至っては・・・

離れたその場所から、クレオパトラに跪き頭を下げた。



「 プトレマイオス王朝・王となるクレオパトラ女王后妃。
  これから、我がローマとの共同統治の表明を国民に・・・」


えっ・・・


言葉に詰まったクレオパトラではあったが、窓から見たシーザーが不安な面持ちで素直に喜んでいないと感じていたための違和感は、弟を失った事だったのかと察知した。
またシーザーにとって、エジプトとローマの共同統治者としては邪魔であったはずの幼い弟。
その死を喜ぶなどという事をしない、敵でなければ花も切る事が出来ない彼の心。
クレオパトラには血の繋がった家族である事・・・
素直に喜んではいない表情が、本心からのものであると感じていた。


「 で・・は・・・」


言葉に詰まったクレオパトラの表情を感知して、シーザーは立ち上がり傍に駆け寄った。

知らぬ間に両手を伸ばして駆け寄っていたが、クレオパトラの前に座り込むと、その両手で抱きしめる事を躊躇っていた。
戦闘のままの自分の腕の中に抱きしめて、いつもバラの香りのする愛しい人を汚したくはないという思いからのものであった。

濡れたままの自分の衣服を着替える事もなく、居てもたっても居られず真っ先に向かってきた事を後悔したのは、血生臭いまま王の前に現れるのには非常識かとも、女性の前であるという事もだったけれど・・・

愛しい彼女の元に真っ先に飛んで帰ってきたかった事は、自分の心が抑えられなかった勝手な行動を産んだ事に、指揮官としての感情の抑揚への考察、己の感情の抑制ができぬものと見なされはしないかとも・・・


でも・・・


差し伸べてしまった両腕には、クレオパトラの方から飛び込んでシーザーに抱きついた。
シーザーは、血のついた海水で濡れている自分の胸の中にクレオパトラが顔を埋めたら、その胸に温かい水滴が溢れてきたのを感じていた。

嗚咽を我慢し涙だけを止め処なく溢れさせている・・・

自分の腕の中・・・

自分の胸の中・・・

躊躇っていた両腕を黄金の編みこまれた黒髪ごと抱きしめて、その頭に唇を寄せると、帰還して初めて微笑んだ。

泣く姿を誰にも見せない様にと、子供の頃から我慢し続けた事は、生まれながらに持った王としての威厳。
女王として・・・ 1人の女性としての感情を抑える事をし続けたクレオパトラの涙は、誰にも見せてはいけないと胸の中に頭を抱きしめた。


抱きしめた腕の中の香りが・・・


ミルラというミントの入ったバラ風呂につかり豊かな香りを芳せる、いつもの愛しい人の香りではなくて・・・

自分が抱いたままのアンバルの、甘く濃艶な香りのままであった事に・・・

彼女も心は戦士と同じ、ゆったり優雅に風呂に浸かるなどせず、ずっと心を戦場に向け続けてくれていたのだと嬉しくて、抱きしめていた腕に力を入れて体ごときつく抱きしめていた。


「 今はまだ・・・なにも言うまでも無い。
  ・・・判らないから・・・」


国民への表明の事を言ったつもりだったその言葉は、自分が感じる気持ちと同じで、彼女の気持ちは同じでいてくれているのだろうと思い・・・


黒髪の上から抱きしめていた片腕を緩め頬に手を添え唇を重ね、クレオパトラからの言葉を塞ぐ様に・・・

約束どおり もう一度この場所に帰還できた喜びは、言葉にできない想いがあって
自分が還ってきた時に胸の中に落としてくれた涙は、自分へのものだと感じると同じ・・・

言葉に出して伝えられない想いであると思うから

十分に心が伝わり、無理に言葉にする必要はないと言いたくもあり・・・

それすら、言葉に出来なくて・・・


シーザーが抱き寄せた腕をクレオパトラの髪の内側に回すと、長い黒髪は黄金のぶつかり合うシャラっという小さな音を立てながら、その心地よい音と共に肩からゆっくりと滑り落ちる。

金色の光のカーテンの様に輝いている黒髪が、ゆっくりと2人の重なる顔を隠していった。


窓の外に昇った大きな満月が放つ金色の光の中に、その光を全身に浴びたシーザーの香油ではじかれた玉の様な海の雫は輝き落ちながら・・・
クレオパトラの髪の黄金は、表の月光にもシーザーからの輝きにも、共鳴する様に金色に輝きだして・・・

ローマの象徴である黄金の月桂樹の冠を持ったままのクレオパトラの手が、愛しい人の頭を抱いた時、その頭にそっと乗せた冠の金色の光は・・・

後ろの月光に重なって・・・

クレオパトラが着けているエジプトの黄金の冠も、シーザーの頭に乗せられたローマの黄金の冠も、一つの月の明かりに溶け込むように姿を隠すように輝きだして、ただ・・・

同じ金色の輝きだけを、満月の眩い光に消された星のない空に、涙と海からの雫を煌かせて・・・

その2人を包む水の輝きは、その空に広がって行く・・・

漆黒の夜空に星を広げて行く様に輝きだした水の粒は、砂漠に無くとも必要な水。

新しい暗黒で未知の未来は、星のない闇の夜空の様で、新しい闇の世界が始まったのだと・・・

金色の光に包まれたままの二人の影は、金色に輝く満月に溶け込んで姿を消し、月の陰の蒼白い光には、想いだけが煌いていると・・・

その表の姿を隠して、二人の気持ちだけは心の中に潜めても、同じだと2人には感じあえていた。






_____  カット 


「 OKだよ~。敦賀君、京子さん、モニターに来る?・・・」



その声が遠くから聞こえる様に、カットが掛かって止まっても、目は開けたけれど唇を重ねたままで居た。
京子の方も目を開けて見詰めてきたので、片手でそっと瞼を隠し、ちゅっと音を立てて唇を離した。

セットの向こうでザワザワとしたスタッフの話し声を聞きながら、抱いたままでいる。


「 あれ? どうした?・・・」


彼女が腕の中から頬に手を伸ばし、そっと指で頬を撫でてくれるのだけれど、そのままじーっと見詰めていた。


「 ん?役が抜けないの? 」


ずっとキスシーンが続いたから?と言う彼女の言葉に思う。役が抜けていないわけではなかったが・・・
ジーっと見詰めて止まったままでいた。


_____ おはようございます・・・

聞いた事のある声が、スタッフの撮影直後のざわめきの中に微かに聞こえ、そちらに意識が向いていた為、キスを離さないでいた俺。


「 ・・・ん~~、なんだろう・・・」


どうでもいい言葉を腕の中の彼女に残しつつ、冷たい床に座らせていた事にも気付いた為、役が抜けてないということにしようかな?なんて思う。


「 キャストの前では、きちんと蓮って呼んで。 」


はいはい、大丈夫です。と腕の中で敬礼した頬にちゅっとキスをしながら、座ったままの体制から膝の下に腕を通し抱き上げて、よっこらしょ。と立ち上がった。


「 ふふ。重い? 蓮、私・・・」


よっこらしょ。と思わず俺が言ったからか、お腹の中に子供を授かって間もない大して増えていない体重でも、自分で体の変化に気付いているからと思える言葉。首に抱きついてくる彼女の微笑みが、自分との子供に喜びを感じてくれているって感じて、そっと下ろし立ち上がらせてから、もう一度抱きしめて・・・

見詰めてくれる瞳の中に自分が写っているのを見たら・・・

無意識の内に唇を重ねていた。




キスの前、瞼を閉じる瞬間には・・・




彼女の瞼もゆっくり閉じたから . . . ____________











それから少し経ち・・・









_____ 敦賀君、いいよ~。


「 ありがとうございます。 」


びっしょびしょの衣装を脱いで、メイクをやり直しもしてスタジオに帰って来ると、休憩場のモニターを見ている人に声を掛けられた。


「 なに?敦賀君、欲求不満? 」


そう声を掛けられたのは・・・



「 えっ・・・」


( 一瞬、誰?と思ってシマッタ・・・。)

今までの俺の撮影をみていたらしい、他のスケジュールが終わって待機していた、メイク後の翠の瞳のブルータス・貴島。


_____ おはようございます。

という声がスタッフのざわめきに混じっていた時には、声で気付いたけれど姿を見てはいなかったので、おろ?何処?っと頭を捻っていたところだった。


この撮影で貴島とは初めて会ったので、貴島のメイクに、へーーっと思ってマジマジと見てしまった。

とりあえず彼からの質問には、自分の演技に何か気付いたのかと思い、疑問に疑問で返す事にした。


「 何で、そう思った? 」


と聞き返すと、ん~だってさ~・・・と話し出した俺の演技。
彼はさすが仕事に誇りを持っている役者。モニターに囚われず、実物の演技を見てくれていたらしい。


「 剣をね、ひったくる・・・怖えっ!って思った表情と、振り下ろして止めて・・・
 ふっと緩んだ微笑みのギャップ?
 あっ、あの使いの役者。本当にビビってぎゅーっと目を瞑ってたよ。 」


ヘ~、本当?と返していたら、実は少しだけ・・・本当にイライラしていた俺に気付いていたと思っていた。


「 なになに、どこから見てた? 」


そんな自分の疑問を投げたのは、自分でも そうでもなかった結いの儀の撮影と、今のシーン。
以外に落ち着いてたよな、自分。と思っていたし・・・でも、その前を知ってるとすれば、
ずいぶん前から居たのに姿を見ていなかったからだった。


「 来た時、まず挨拶に顔を出したら、敦賀君が兵士に怒鳴っててさ・・・んで、
 メイク終わってスタジオ入りしたら・・・京子ちゃんの上で叫んでたし
 今度は衣装が出来て返って来たら、今もなかなかキスを離さないし・・・ 
 あれ・・・ めずらしいね。敦賀君が、共演者をなかなか離さないのって。 」


( なるほどな。要所的な箇所だけしか見てなかったのか・・・。)


貴島が肘で小突き、耳元に寄って小声で言ってきた。


「 なに?敦賀君、最近してないの? 」


うんまぁ・・・その通り。彼女が妊娠したと分ってから、その気は起きない。だから、1ヶ月ほどゴブサタなのは確かな事。
おもわず、アドリブでも・・・クレオパトラの上で叫ぶことを思いついてしまったほど、彼女の上に素肌で体を重ねていると我慢できそうに無くなるほど、キスも離れがたし・・・。

思わず言いそう・・・いや、今がチャンスかもな。と思って同じ様に貴島の耳元で返答した。


「 実は・・・1ヶ月ぐらいしてない。 」


1と人差し指を目の前に出して、唇に持っていったら・・・えっ彼女いたの?と聞かれた。
なので、視線をそのまま、ホログラムの撮影セット側に入っている京子に移した。

他の人には気付かれない様に、目だけを貴島を見詰めた後に動かした。

えっ!・・・えっ!・・・っと二度見している貴島。


「 えぇ~・・・・」


っと大きな声を出しそうに成っている貴島の口に人差し指を当てて、うるさい。と反対の腕で肩を抱いてスタジオの外に出ようと引っ張った。

案の定・・・傍にいたスタッフ達に、しーっと言われて、すみません。と二人で小声で謝りながらモニター横目に廊下に出て行った。




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To be my Grace - OTHER WORLD. XXIII
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Love Letter from RT and CH

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