mimi's world * HOPE and DESIRE

_______ BE-lie-VE * be-LIE ve * believe...the SHAMs for heart healing * mimi's world-7 _______

Myth. BLUE BELL - Act.13 - First 

.



mimi’s Image Music * Undying Love
Undying Loveby Two Steps from the hell





Myth.BLUE BELL -  Act 12






あい 

愛が必要なのかと言われたら

それには答える事が出来ないから



まだ・・・


自分には・・・


分からない


心の中にある感情が・・・   こうい であると



好意 なのか

厚意 なのか


それが幾重にも降り積もる



紅と淦と黄昏と彩とりどりに舞い散る光景の様に

          秋の森の情景には・・・

自分から命終わると自ら根元を離れる様に

          時をかけて成長し・・・

蒼く澄んだ天に伸びる その高き天辺より

          力尽きたその終りに・・・

寒風に彩を変えられて 自ら染め上げた あか

          閼伽に時の終りを告げられて・・・

多彩な あか にそれぞれが換るのは

          それまでの過程に経たものが・・・

それぞれ違う あか に出でて




降り積もった目に鮮やかな森の赤い情景は

純粋な 閼伽い 屍たち




心を燃やすその色が

胸の内を埋め尽くし創めて・・・




心の中の感情が、あいなのかが分からないから . . .





廻り続く走馬灯の影画の様に、蘇る過去の時が


様々なあか彩の、紅に、朱に、黄昏に、淦に・・・


廻り続ける走馬灯は、燃え続ける炎の熱で


様々に あかあかと、赤々と、明々と、厭々と


心やいかがあらむと厭かず思ひけれど のままに・・・


燃える糧が尽きるまで






mimi's Image Music * Time Lapse by Dot Major & Walk by Starkey




________ 霞掛かる 時の間まで・・・・・・

・・・・西に月が帰る 時の間まで ________






鈴音・・・


「 ・・どこへ 」


それは・・・


「 蒼だけでなく、紅の方も 」




どうぞ・・・

・・・どうぞ



どうぞ・・・  どうぞ
どうぞ  どうぞ  どうぞ・・・
・・・どうぞ  どうぞ
どうぞ どうぞ  ・・・どうぞ
どうぞ  どうぞ・・・
・・・どうぞ  どうぞ どうぞ
どうぞ ・・・どうぞ
どうぞ・・・ どうぞ どうぞ


・・・どうぞ
どうぞ・・・・


「 なりよしさま・・・ 」



きゃはは


うふふふ・・・・ 

・・・・くすくす




「 紅の あい霞をいかが・・・」


________ チリ チリ チリ チリ・・・


鈴の音が鳴り響く館の中で


チリ チリ チリ チリ・・・

・・・シャラ シャラ シャラ _________



前と後

上と下

右と左



全ての方向から・・・

全ての方向から、彼女の声が混ざって聞こえる。


・・・鈴音



「 あら・・・ 」

・・・くすくす

「 お兄さまは・・・ 」

・・・・ウフフフ



鈴音に抱きつかれていた両手が胸の前から離されて

鈴音に握られていた両手がすっと手の中から抜けて・・・



何か分からない感覚に埋め尽くされていた中から解き放たれた瞬に



足元を通り過ぎる ふわふわの感覚も消えて

鈴の音が遠ざかる 微かな音も消えて・・・



目隠しの紫更紗の結び目に、両手を頭の後ろに回した時だった


________ シュル・・・


目を開けた光景は、石造りの手すりの階段がある屋敷の廊下

階段上の突き当たりに、銀のフレームに入った肖像画が並んでいた。

何の変哲も無い屋敷の中に、そこには乳母以外居なくて・・・

屋敷の中心にある、窓の無い廊下は冷えていた。



________ チリ チリ ・・・ チリ チリ チリ・・・



鈴の音が聞こえて、足元に居る白猫に気が付いた時


「 ねぇ・・・りょう? 」


後ろを向いた自分の手から、するっと目隠しを抜き取られて

前に振り返った その瞬間・・・

頭を抑える様に回されて、後ろから目隠しで前に引き寄せられた。



「 なりよしさま・・・」


目の前で自分を引き寄せたのは、紅色の着物に、長い黒髪を下ろした鈴音で・・・



「 鈴音・・・
  怜って、・・言った? 」


鈴音の温かい指先で、口を閉ざす様に塞がれると


「 もう一度・・・」


見詰められた瞳は、笑い声に想像できない優しい眼差しで・・・




_____ その瞼を、閉じさせて差し上げましょう・・・




背後から聞こえた鈴音の声に・・・

目の前の鈴音の口は動いてなくて、その口角を引き上げて声無く笑った。

目隠しで引き寄せられていた頭を鈴音の顔に引き寄せられて・・・

・・・気付いた。



鈴音は両手で、目隠しの左右の端を持っていたはずだと・・・・


自分の唇を抑えている手は・・・

目の前に立っている鈴音の手。



ニッと紅の唇を吊り上げて笑った彼女が

後ろに振り返る間も無いほど、強く引っ張って

口を抑えているその手に、唇をのせ ちゅっとゆっくり音を残し・・・

何が何だか分からないまま、鈴音の開けた瞳を見詰めていた。



口を塞がれている鈴音の手は そのままなのに・・・

頭を引っ張られる目隠しは、緩む事無く

目の前にいる鈴音以外、何も見えない様に抑えられていて

彼女は、俺の口を押さえたまま人差し指だけを立てて、目を見詰めた。


その瞳が、ニッと笑うと・・・

もう一度目を開けたまま、ちゅっとゆっくり人差し指に唇を付け・・・



軽く俺の口を押さえていたその手は、手の平をぎゅっと唇に押し付け、撫でつけながら下に降りて行き、顎をぐいっと力強く引っ張った。

音を残した人差し指が、横一文字に唇を塞ぐ様に左から右にゆっくりなぞり始めて・・・





_____ 口の付いた、ものを言う鳥は ・・・





「 うるさいもので・・・ 」






きゃはは・・・・


・・・ くすくす 


うふふふ・・・・




鈴音の笑い声が、自分の周りを包んでいて・・・

背後からも前からも、彼女の言葉がはっきりと聞こえていた。

引き寄せられている目隠しで、左右の視界は閉ざされていて

唇を人差し指で横に撫でている、目の前にいる彼女しか見えなかった。




「 なりよしさまは・・・ 」


彼女の唇が動いて、そう言った途端

鈴音はその人差し指に、歯を立てて噛み付いた。 



自分の目の前の、彼女の瞳の瞳孔が、ずっとこちらを見ていて





______ 口付けをされた事が、おありですか・・・




背後から、指に噛み付いているはずの鈴音の声が聞こえていた。

目の前の鈴音が瞼を閉じたら、顎を持ち上げ噛み付いている手を離し、

頭全体に抱きついて鈴音以外 何も見えない様に、着物の袂で周りの視界を閉ざされた。



「 なりよしさま・・・
  キスをした事、ありますか? 」



唇にそう囁きかけられて



「 ・・・そう
  キスに目を瞑れって言う事? 」



瞬きをした鈴音は・・・



「 左様で・・・・・ 」





心の中の感情が、愛なのかが分からないから. . .




もう一度、ニッと笑った瞳が瞼を閉じると・・・



右に感じる冷たい鈴音の手が

左に感じる温かい鈴音の手が


            ・・・それぞれ左右の手を握り締めて




心の中の感情が、愛なのかが分からないから

あいがひつようなのかすら. . . .




“ 子供の方が厄介だろ・・・”

そう言った この子の兄、怜の声が・・・




________ ご用のない者・・・

・・・ とぉさせぬ ________


そう言った 怜の妹、鈴音の声に・・・




“ 綺麗なままの、け・・・ ”

紅く染まる石造りのバルコニーで、怜が言いかけた言葉・・・




“ いや、綺麗って・・ いいよ・・・”


りんどうの香りを運ぶ潮風に遮られた・・・

・・・たくさんの赤の重なる情景に ________




糧の尽きるまで燃やされて、糧が炭と化すと、黒ずんだ跡を残す


 銀には人の生きる痕跡を、指紋として

 金には人の命を絶つ企みを、毒として


金・・・


 かね か・・・



そう思った瞬とき __________ . . .






心の中の感情が、愛なのかが分からないから

あいがひつようなのかすら・・・

・・・・ 分からなくて ______________





    自分の視界を封じた着物の袂が 蒼い世界の中に動く紅を想わせ






In the practice for Act10-13



Myth. BLUE BELL


― 鈴鳴り岬の向こう ―


Act.13


『 走路 』



mimi's Image Music * Instrumental Instrumental by Rob Dougan




________ みつ月の夜 さくやの瘧





りんどうの花を 漢字で書いた時

竜胆 とも・・・

疫病草 とも・・・

瘧草 とも・・・


_____________ おこりぐさ その身体に


    いや・・・・

         我が心にも・・・



               


________ 満月の夜 さくやの熾り ・・・




まだ満月が顔を見せない、ビルの街。


煌く星も見えない明るい闇の濃紺の空・・・

仄かに空には、街灯りの販社の色と違う光に、照らされて・・・

その空の部分だけが、純粋な色を汚い世情の空気の中に浮かんできていた。




高速を降りてから・・・
渋滞はあったものの、いつもどおりの道順がゆっくりでも、一番早いと教えてくれていた。


スゥ―――・・・


息を吸い込んで、飲み込むように前を見て運転していた。

赤信号で止まっているその先に、病院の正面が右手に見えていた。


青になって・・・


クラッチを離そうとした時に、聞こえてきた。


________ ピーポー・ピーポー・ピーポー―――・・・・


十字路の左側から、サイレンが聞こえて・・・
それと共に赤い光が点いたり消えたりを、白いガードレールに写していた。


ふっ・・・


短く笑い目を瞑って微笑んだ。


ふ ―――・・・


内ポケットの場所に手を当てて、胸の中から深く息を吐いた。

助手席に置いた、白い箱。そちらに顔を向け、もう一度微笑んだ。




白銀の中に閉じ込めた蒼い光の彼の名前・・・・

シルバーの中に、自分の名前と一緒に閉じ込めた蒼い花・・・



開発パートナーである山延に、両方とも見せて、その反応を確かめてみようかと思っていた、さっき。

高速を降りる前の渋滞の中で、決めていた事。



今までの道なりに行けば、無い事は分かっていた。


それは・・・


これと同じ事かもしれないと、そう考えていた。


 
渋滞具合により、違う道に・・・

自分にとって必要なもの。

それが在った時・・・



もしも途中にあったらば・・・ 



それに賭けたくなっていた。



今までの直感が、“ 賭けてみろ ” って・・・そう言っている事。

自分の気持ちに何か引っ掛かっている事が、どうにも分からない今・・・

ゴチャゴチャして、横も前も後ろも行き詰った状態の渋滞具合。

それが、心の中と同じかもしれないと・・・



この道の渋滞具合で、違う回り道をしようとGPSが教えてくれたその道に


もしも花屋が途中にあったらば・・・

その話はしない。と・・・

そう決めて、高速を降りていた。



でも、まだ花屋は出てきていない。


救急車が通り過ぎても、救急と面会の入り口は違う場所だから、通り過ぎた後なら、正面からいつも通り入って行っても、問題は無いだろう。

こちら側が青信号の内に通り過ぎ、病院に入って行った救急車を見てそう考えた。けれど・・・

出ようと思った時に、もう一台救急車のサイレンが聞こえてきた。

少し離れていた為、どうしようか一瞬迷って病院正面を見ると、先ほどの救急車は、なかなか右折できずに病院のゲートを入れずにいた。

先に行って救急車と救急車に挟まれたくなかったので、止まる事にしたら、黄色に変わり赤になった。

赤で待っていると、やってきたもう一台の救急車に続き、数台も救急車が連なって来た。



それを見ながら、ハンドルの上に置いていた両手をパキッパキッと鳴らし、フッと短く息を吐いた。



・・・分かった、そうしてみよう。


助手席に置いた、白い箱。そちらに顔を向け、もう一度微笑んだ。


________ パチッ


それを、ダッシュボードの中にしまって、閉じた。


青に変わって病院の前まで来ると、右折レーンを曲がろうとする最後の救急車の横を徐行した。
病院正面玄関前にさしかかり、徐行しながら門の向こうを覗くと、続々と担架ベッドの怪我人が救急車から降ろさされて、その周りにたくさんの救急隊員やナースが集まっていた。

怪我人は・・・ 遠目から見ても分かる服を着ていた。


白衣の医者やナースに救急隊員の中で・・・

建設現場の作業着を着ている人達。

蛍光のオレンジ色のラインが、救急車のライトに見えていた。



この山延の入院している病院は、大学に繋がってもいた。

“ 帝大の大学病院 ” 

山延も怜も、この大学のOB。それを考えながら、大学の少し先を通り直ぎた角を曲がって、外来の駐車場のある裏側に停めておこうと考えた。


初めて来た病院の裏側の道。

病院に来る人や、大学に通う人も多いからか、コンビニやスーパーにファミリーレストランなどが並んでいて、以外ににぎやかな道だった。

スーパーの前に花を置いているのを見つけたけれど、ブーケとして纏まっているそれではなく、自分が探しているのは・・・


・・・お花屋さん。


ガラスのショーケースの中に保存されている、単品ごとに分けられている花を見てのインスピレーションが欲しいが為なので、それは全く無視する事に決めた。


駐車場に入る右折レーンの前・・・
右折のウインカーを出しレーン移動しようとしたら、横断歩道で繋がる病院の対向側に、なぜだか・・・

当然の様に、お花屋さんがあるのを見つけてしまった。


しかもモダンなビルの1階ワンフロア全部を使っている、大きな花屋だった。

全てがガラス張りに成っていて、色とりどりの花が道から見渡せる。

薄暗くなりかけた今はライトアップされていて、そのガラスの向こうは・・・


日に当たる花畑・・・ 

風に揺れる花の絨毯の様に、高さを揃えて並べられている。
その花畑の向こう側にガラスのケースが長々と見えて・・・
大切に保管されている花が、所狭しと入っているのが見えた。


意識がそちらに向いて固まったまま、ごくっと息を飲んだ。

とても胸騒ぎがして、自分の心臓をドキドキさせていたのは・・・

ずっと脳裏に浮かんでいた、蒼い世界。


群生して咲いていたりんどうの蒼い花に・・・

さーっと音を鳴らす樹々、その香りを森の中全体に吹き抜ける風・・・

その風に・・・

白い振袖の袂が、羽ばたく羽衣の様に見えて・・・



トントンと胸を軽く拳で叩き、脳裏に浮かんだ光景に胸の内が熱くなっていたのを抑え様としていた。

右に病院の駐車場があり、左にビルの間の路地がある。
狭い路地を入ったビルの奥に、花屋の駐車場がある看板も見えていた。

でも・・・・

右折レーンは待つ車も居ない・・・

それに・・・対向車線は、珍しく・・・いや・・・きっと・・・

表の救急車のせいなのか、全く来ない。



・・・来ない内に、曲がってしまった方がいいのか



そう考えて、胸に当てた拳をそのまま口元に当てて・・・

車線変更を右と左とどちらにするか、躊躇いウインカーにその手を伸ばした。











mimi’s Image Music *
Grace by William Joseph










一瞬だけ躊躇って、ウインカーを右に出し、病院の駐車場に入れることに決めた。


外来の駐車場は、外来時間が終わっている為ガラガラで、停まっている車は二手に分かれていた。
きっと花屋に出向いてから見舞いに行く人の車だろうと思える、道路側に停めてある方と、病棟に近い方と二手に分かれて停めてあるのが見えた。


自分は・・・


ガラガラの駐車場の中で、病院側と道路側どちらに停めるでもなく
誰も止めていない、街灯のある真ん中に停めた。

車を降りて、目を瞑った。


一度、蒼い世界を思い浮かべ・・・

自分の胸に手を当て、俯いた。


そして次に、鐸杜の蒼い光に名を綴った名刺を思い浮かべると・・・

舞い散る黄葉と紅葉の、紅と黄昏の光景が思い浮かぶ。


ぱっと目を開けて、右の病棟を見て・・・

左の、道路向こう側、花屋を見て・・・


・・・微笑んだ __________ 




その信号の色は、青だった。


信号の通り・・・・

その信号が変わらないうちに、渡ろうと・・・

気が付いたら道路の方に向かって、走り出していた。




赤いサイレンの光の様に・・・

何かを表していたのかと思えるような、紅葉の紅色の世界。



何故だか分からない、蒼い鐸杜のギャラリーとの対比が心の中にあって・・・



鐸杜には・・・
自分が今日一日だけ、東京に会合の為に戻るとは言ってはいなかった。

それなのに、東京のオフィスに届けられた名刺。

蒼い白銀の光は、デスク下に落ちていた書類に気付かせてくれて・・・
もう一度戻る前の、数時間だけいた自分のオフィス。

社長室。

アイツの社長室には、“ ギャラリー ”と自分で名を付けた彼が、自分との出遭いには・・・

“ 一期一会 ” と・・・

One moment One meetingの千載一遇の時は、同じ人にもう一度出会っても、同じ瞬間は二度とやって来ないとの意味を込めてくれて・・・

アイツの言葉を信じたくなった、自分。


蒼いガラスの向こうに、空色の煙を吹いた白革の男。

東京のビル、無機質に佇み、影を必ず作り、暗くしている中に光を当てる様に現れた


柔らかな陽射しの中に生きるそのままの面影を・・・

自分の周りにいる人々、社員に残して・・・

影の中に、明々とした姿を脳裏に残し、自分の吹いた空色の煙に自ら消えた男。

自分の常に周りに居る人々にも、一期一会の情景を心に残して・・・・・


走りながらそう思っていて、直前に点滅を始めた歩行者信号を急いで渡った。


ハァハァ・・・ 

・ ・ ・ スゥ――― 
ふ ―――・・・


花屋の前まで来ると、明るいガラスの向こう側に、広がる花の絨毯の世界。

色とりどりの花が並べられていて、その向こう側にガラスのショーケースも見える中
喫茶店にもなっているのが見えた。


自動ドアの看板を見ると、老舗の果物屋の看板と共に、老舗の花屋の中が並んでいた。


________ ガー・・・


いらっしゃいませ


自動ドアを開けると、ふわっと漂う自然の花の香りに、息を吸い込んだ。


「 こんばんは。 まだ、開いていますか? 」


_____ もちろんです。


その答えに、微笑み返した。

花で溢れかえる店内に入り、ディスプレイの様に並べられた表側の綺麗な花畑の方に目を向けたまま、ガラスのケースの前に行った。

ぱっと視線を向けて、長いガラスのショーケースの中を、端から端に目を移していった。

その中で・・・

自分の目に留まった花の色があった。


・・・蒼い花


その色に目を向けたまま、その花に近づいて行った。


_____ どのような物をお探しですか?


「 お見舞いなんですけれど・・・」


素直にそう伝える。


_____ では、病室に花瓶がありますでしょうか?


そう聞かれて、山延の病室を思い浮かべた。

重役だから色んな所から、花が贈られてきていて・・・
いつも花に溢れている事は、覚えていた。

花瓶があるかどうかは良く覚えていないのと、たくさんの花瓶がるかどうかは分からない事だった。


「 そうだな・・ あるか・・・
  いや、よく分からない。 」


そう答えると、そのまま置けるアレンジメントの方がいい。と薦めてくれた。


「 じゃぁ、そうする。
  でも、時間が・・・ 」


ぱっと壁掛けの時計を見て言った。


「 あぁ、でも面会時間は・・・
  こちらの方が俺より、よく知っているよね。 」


_____ はい、存じております。
   大きさにもよりますが、小さいものだと5分程度で・・・


「 そう・・・じゃぁ、そうする。 
  そうしたら、これと・・・ 」


一番に目に入った、蒼い花を指差して・・・

他にも目に入った花があった。 
そちらも指差し、残りは花畑にされている方に、自分で手を伸ばし・・・

そのブーケの一束を両手で取り上げた。


「 これも、一緒に混ぜて下さい。 」


振り返り、手渡すと・・・


_____ うわっ。すごい・・・
   綺麗な色の組み合わせですね。


「 そう? お花屋さんにそう言ってもらえると
  ・・・嬉しいよ。 どうも、ありがとう。 」


どの様な感じがいいか・・・ じゃぁ、その通りに・・・
そう相談してから出来上がるまで、繋がっている喫茶店に居てもいいか?と聞き、そちらの方に歩いて行った。

この老舗の花屋はデパートの中にも入っているし、同じく有名老舗フルーツ店もデパートの中に入っている事を知っていた。


その有名デパートは・・・

鈴鐸 RINDOHの ホームページの中に名前を見る事が出来ていた。




ガラスのケースの中には、フルーツの色鮮やかに盛られたケーキや、お持ち帰り用の小さめのパフェなどが並べられていた。

銀のお盆の上に並んだケーキを見ると、鈴音の屋敷に初めて足を運んだ時、テーブルの上に並べられたティスタンドのケーキを思い出す。

色を失った自分の目に、白黒の光と影の織り成した、ケーキの色に・・・

そう思い出していた時、ぱっと目を上に向けた。

カウンター奥の窓の無い壁際には、たくさんの様々なカップが並べられていた。


「 じゃぁ、エスプレッソ・・・ 」


そう言いかけても、車の中でたった今、冷めたエスプレッソを飲んだばかりだった。
だから・・・


「 アフォガード・マキアートにしてくれる? 
  シングルショットでいい・・・ 」


_____ かしこまりました。 
   では、カップは・・・どちらがよろしいですか?


思ったとおり、その老舗では、本店と同じスタイルだった。
壁際の棚に陳列されていたカップを見て、1つだけ目に入った物があった。


「 ごめん。やっぱりもう一度、変えていい? 」


壁に陳列されている、カップの方に目を移し、順を追って・・・ 見つけた。


「 あれ。 あの銀のにして下さい。
  だから、シングルショットのマキアートで 」


_____ あ~・・・ ちょっとすみません。
    直ぐに、戻ります。


一度裏に引っ込んで行った子は、直ぐに出てきた。


_____ はい、かしこまりました。
   錫のエスプレッソカップですね。



やっぱり、そうだった・・・



銀と言った自分に、店員が返した錫との答えに、そう思っていた。

アフォガードにしたら、少し大きめのコーヒーカップになる事を考えて見ていた棚。


端に目を移して行った時、たった1つだけ・・・ 

小さいエスプレッソカップの並ぶ中に・・・

ライトを直接反射する事なく、光を細かく映して星空の様に輝かせているカップを見つけた。


その星空の様な白銀の瞬く輝きに、鐸杜の造った物だと・・・

彼の名刺も、彼の杯も、同じ質感の燻った白銀が脳裏にぱっと浮かんでいた。


同じデパートの中の地下に果物店が、1階に花屋が、2階にパーラーが入っているその銀座のデパート。
もし、今度行く事があったら、鈴鐸 RINDOHのある売り場に行ってみようと思っていた。


席につくと直ぐにカップが運ばれてきた。

見た目はすべすべのカップでも、カップ全体を指先でそっと掴むと・・・ 錫の杯と同じ手触り。
錫鐸RINDOHの物なのか、その手触りは滑らかにざらついた表面で、指先で全体をそっと撫でた。

銀のスプーンの上に、1つ蒼紫色の花の砂糖漬けが添えられていて・・・


テーブルを見ると、シュガーポットは置いていなかった。
普段、砂糖を入れる事をしない自分は、本店に行った時に気付かなかった。


・・・いや、あの時はドライフルーツが添えられていたはず。


何度か足を運んだ事のある本店での事を思い出そうと考えると、銀の年季が入りいい味を出している、クラシックなシュガーポットが置いてあった記憶がある。

中に入っていた、真っ白の角砂糖が、なぜか・・・

懐かしい・・・

・・・って、思った事を思い出した。


花屋と繋がっているからか、蒼紫色の花の砂糖漬けは、花の周り全体が白く結晶の様な砂糖衣に包まれキラキラと輝いて、白の中に蒼い色を薄っすらと見せていた。


普段入れないけれど・・・


その花の砂糖漬けを、マキアートの中に浮かべてみた。

白いミルクフォームの上は、低い空に浮かぶ入道雲の上に蒼い花が乗っている様で、
重みと共に徐々に泡は、へこんで行った。

その下に直ぐ、エスプレッソの黒が泡の中に見えていて・・・

花が沈むと中心に黒い穴の開いた泡が、プチプチとそこから弾けながら萎んでゆく。


スプーンで掻き混ぜる事無く、たくさんの砂糖を入れて飲むエスプレッソ・マキアート。

イタリアではスプーンは付いてこない事を、訪れた時イタリア人に教えて貰った。


エスプレッソカップから目を離し、隣の席を見ると、ドライフルーツが銀の小皿に乗せられていた。
横の人が飲んでいるのは、自分が頼もうと思ったアフォガードの様で、アイスクリームが溶けほんのり甘いコーヒーに、酸味の利いたドライフルーツが添えられていた事に納得できた。

果物の老舗のお店だから、ドライフルーツが小皿に乗せられて来る事は、知っていたけれど
エスプレッソに、花のドラジェが付いてくるのは、初めて見た。


錫のカップの中で、花が泡に沈み行くと、白い泡は上から花を包んで被せるように、蒼い花の姿を白い泡の中に消した。プチプチと小さな弾ける音と共に、その泡が消えると・・・

蒼紫色の花が咲く様に開いて、浮き上がってきた。


怜が錫の杯の中に、りんどうを入れた事を思い出して、あれは一体何を確かめようとしていたのか考えながら、銀のスプーンで花を掬い取り、キラキラ輝くソーサーに置く事を躊躇って、スプーンを持ったままソーサーを見詰めていた。
キラキラ輝くソーサーを見詰めながら、お冷の下に敷いてある紙のコースターの上に花のドラジェを乗せた。


カップに口を付けると、仄かに花の香りがする様で・・・

指先でカップの底をそっと撫でると、刻印がしてある手触りが合った。


あぁ、あの時と同じ・・・


ふと、目を花屋の方に向けると、アレンジメントは半分ぐらい仕上がっていた。

カップの底の刻印を指で触れながら、日本酒を飲む様に少しずつ飲みながら・・・

ソーサーを裏返して、刻印を確かめた。



でも・・・


ソーサーの刻印は、控えめな小さい刻印自体同じ・・・ ただ・・・

  “ RINDOH ”

・・・と、だけ・・・刻印されていた。


目を凝らしても、“ 鈴鐸 ” の漢字の刻印は入っていない。

一人の人が座る様にか、数席だけ椅子が並べられたカウンターの奥に、マキアートを入れてくれた子と話している、少し年配の方が居た。
マスターかな?と思い、声を掛けた。


「 すみません・・・ 」


_____ はい。どうかされましたか?


年配の方にカップを持ったまま、カウンターに近づくとそこに座り直した。


「 いえ・・・コーヒーは、とても美味しいです。 」


本店と違うドラジェのサービスにも褒め言葉を添えると、嬉しそうに微笑んでくれた。

怜が日本酒にお造りに添えられていた、りんどうの花を入れた事が頭の中に鮮明にあった。
若女将は、もちろん刺身の端として食べられる物だと教えてくれた事。

その杯と同じ様な大きさのエスプレッソカップを、カウンターの上で差し出した。


「 ご存知かどうかは、分かりかねますが・・・
  この錫のカップについて、お聞きしたい事があり・・・」


そこまで言葉を言うと、あぁ、はいはい。と何か知っている雰囲気に、こちらも微笑んだ。
そしてソーサーの裏を返し、刻印を指差した。


「 このRINDOH の刻印なのですが・・・」


_____ こちらは、鈴鳴り岬と云う場所にて
   製作されていると、伺っております。


やっぱり、鈴鐸の物に間違いは なかった。


「 では、自分が手にした物と、違いまして・・・
  前に見た物は、“ 鈴鐸 ” りんどうと、読む
  ・・・その漢字も、入っていたのですが・・・」


音の鳴る鈴の“ 鈴 ”という漢字に、銅の意味の“ 鐸 ”という漢字の・・・と、説明を始めると・・・
マスターは目を丸くして驚いていた。


_____ そ・ちらは・・、デパートの中でもギャラリーに飾られている物で・・・
   誰も手を触れられない様、ガラスのケースの中に入れられております。
   木箱に白毛氈と共に入れられていて、その木箱も一緒に展示されておりました。
   作品名と数々の国際コンクールで賞を取った作者の名が、ですね・・・
   ・・・入っておりまして
    特別注文での承りの様ですが・・・


この様に老舗の別店と言えど、本店にもそのカップは手に入れられないと教えてくれた。


_____ ただ、どうしても自分が惚れこんで
   このカップで、お出ししてみたいと・・・


一目惚れをして、売り場で買える物だけど、それでもその他のカップに比べ数倍だと教えてくれた。


_____“ RINDOH ”の刻印だけの物でも、同じクオリティの錫の為、
   輝きは同じです。が・・・


マスターの続いた言葉には、あぁ、そうそう・・・と自分も納得がいく表現だった。


_____ 白銀一色の煌きの、RINDOH の物と・・・

    クラリティやカットの洗練されたダイヤモンドの様に
    幾色にも煌きの輝きを放つ、鈴鐸 RINDOHの物。

    木箱に入れられている意味が、とても分かる作品でした。

    ギャラリーで聞いた所、特注の受付は作者自身が創るかどうか決めると・・・


どんなにお金を積んでも、なかなか創ってもらえないと伺ったと、話してくれた。
手にした事がある。と言った自分。
この鐸杜が創った物しか知らなかったという風な質問に、かなり驚かれてしまった。


そうなんだ・・・


初めて、鐸杜の世間での凄さに驚いた。
じゃぁ、彼の“ 社長室 ”こちらの本人曰くのギャラリーで、あんなにたくさん並んだ全て彼の作品のみという光景は、世界中であの・・・ギャラリーだけなんだと思った。

でも、あの料亭では、普段の様に使われていた事を考えた。


_____ お店で使うには、鈴鐸RINDOH の物は無理です。
   高価すぎるし・・・ その前に、入手不可能ですよ。


鐸杜の名刺に入れられていた、彼の名前・・・


    鐸杜 領 
   Takuto, Ryo


彼の名前だけが蒼い煌きで出来ている、あの名刺。
たった一色だけ・・・それも同じ蒼だけの光の粒子を、空中に浮かばせる事。
それを、どんな角度のおうとつがつくり上げてくれるのか、磨き方や温度差に時間だろうか。
一色だけの光を、名前に浮かばせる その技術は・・・

正に・・・ “ 神業 ”という表現が当て嵌まる物だと感じた。



 『 じゃ、1000円。 』

 『 えっ、お金取るの? 』


名刺を創るのに、1000円でいいと言った彼。
お金を取るのかと、聞いた自分。

・・・あのおかしな やり取りに、思い出してカップを見詰めたまま微笑んでいた。


「 あの・・・作者の名が入っていると言うのは・・・
 茶道具の様に、墨で書かれていると想像していますが・・・」


_____ はい。そうでした。組み紐が掛けられて・・・


マスターがデパートのギャラリーで聞いたのは、自分が考えていた通りだった。


_____ 1つだけを創る為に、火と向かい合った・・・その炭
    最後の燻りにかわる、火が燃え尽きるまで灯していると

    生み出す物に・・・
    命を与えるのは、火に木に空気や水の、自然であって
    作者は・・・ 
    永遠に輝く、命を吹き込む 手伝いをしているだけだと
    
    命に名前を、命を与えられた物と共に・・・
    そうですね、母なる自然と手助けする父親って、ところでしょうか


「 意味を、お察しいたします・・・」


組み紐の結び方も独特だった。

父が自分にだけ教える、独特の紐の掛け方。時間を掛ければ開ける事は出来ても、こっそり戻す事は出来ない様な、その掛け方とは違う・・・

鐸杜が掛ける結び方は、片花結びに紐先を片方だけ花弁に通し、蝶の形に見せていた。
それに・・・・・

イタリアの美術館で、鐸杜の写真と共に最優秀を取ったエスプレッソカップが、飾られていたとも教えてくれた。



_____ ものすごく綺麗な作品でした。
    コーヒーが入ったら、コーヒーに・・・

   ・・・ 空が映る。


マスターのその表現に、顔を上げた。


「 空ですか?・・・ 」


蝶子と2人だけの朝食に、コーヒーの中に青空が映っていた。

鈴鳴り岬の空は、青く澄んでいて、遠い彼方の空の蒼い色まで見えて・・・
真っ白い雲が、りんどうの香りの風に流れているのまで、コーヒーに映っていた。


_____ はい、空・・・ 

    星空が・・・ 出来るそうですよ


マスターが言うには、コンクールで取られた影像がモニターで繰り返し・・・流れていて
それを何度も見てしまったほど、エスプレッソの入っていない飾られたカップをずっと見続けていたと。


エスプレッソの黒に、光の粒子が反射して、煌く本当の星の様に幾千も・・・

湯気がフワフワ揺れ昇る度に、光の色を変えてコーヒーの中の星が輝いていた。

砂糖を入れると底に沈んだ砂糖が、ゆっくりと温度で溶け出して行くラインが揺れ動いているのが見えて

その動きに黒くて見えない筈のコーヒーの中で、砂糖の上に、星を降らせている様だと。



_____ 底に沈んだ砂糖はですね・・・

   満月の朧月の様に・・・
   カップの底から光が出ている様で、
   コーヒーの揺らめきの星たちの靄に

     ・・・浮かぶ様に、輝いておりました。



光を見えない透明な空中に浮かばせる事を、実感している自分には・・・
どう言ったものかと思案しながら話してくれる事が、とても十分過ぎるほど、分かる事だった。


________ カチッ・・・


飲んでいたエスプレッソカップを、ソーサーの上に置いた。


「 でも、人の手に渡った時、その持ち主の・・・
  ライフスタイルや、持ち方、飲み方に合わせて
  容を変形させていいと、確か・・・ 」


言葉をそこで止め、鐸杜本人が言っていたと言うのは、やめておこうと考えた。
どこかで読んだとも思い出す・・・


「 あぁ、その賞を取った時だと思います。
  あれは、Time誌で読みました。 」


________ チリ・チリ・チリ・・・・


鈴の音が突然聞こえて、そちらの方に目を向けた。
喫茶店側のドアを開けた時の、鈴の音・・・


_____ ありがとうございました。

マスターが声を向けたのは、自分の隣に座っていた後ろ姿の女性が、出て行ったところだった。
William Joseph の奏でるGraceのピアノ曲が静かに流れていた店内は、自分だけに成ってしまった。


_____ 今の、ソーサーにカップを戻す・・・
    微々たる音さえ、消せるともモニターに・・・ 


「 はい。知っています。 」


怜と乾杯した時の、“ 沈黙 ” あの、錫の杯が奏でる音は無音。

その代わり、音の鳴る・・・ 鈴。

小さな鈴1つなのに、一番いい音色で高く強く鳴り響いて、頭の中に廻り犯される音だった。
あの音の対比も、彼にしかできない物だと、考えた。


その人が立ち上がったのを切欠の様に、テーブルを拭きに向かったコーヒーを入れてくれた子が、マスターに話しかけた。

_____ どうしたんでしょうね?今日は・・・

_____ う~ん、そうだな・・・


その2人の会話に、店内を見渡しても、花屋の方にも誰も居なかった。


「 何時に閉るのですか? 」


もう閉店の時間なのかと気にしていた。
アレンジメントは、ほぼ出来上がっているのが、此処から見えていた。


_____ いえ、いつも普段は帝大のお嬢様方やお坊ちゃま方に、
    お医者様などで溢れている時間なのですが・・・


なぜだか、人が来ないと言う。


_____ まぁ、そういう日もありますよ。


そう言ったマスターには、救急の患者が表にたくさん運ばれていた事を告げた。
学生は授業が終わっているし、医学部のインターンとして残っている学生もドクターと一緒に救急に行ったのではないかと話していると・・・
たった今出て行った女性が歩いているのが、ガラス張りの外に見える。

喫茶店の出入り口がある建物の横から出て、大通りに向かう十メートルばかりの細い通りを歩いている。
背中の方から大通りに抜けるビル風が吹いていて、顔に掛かる長い髪を手で押さえながら歩いている。
病院の方に向かうのか、横断歩道の信号で止まっている間、片側の肩に長い髪を纏め耳に髪を掛けていた。


_____ そうそう、あのドアベル。あれも・・・
    “ RINDOH ”の風鈴なんですよ。
    
   こうして、ゆっくりと大好きな物の話ができる
   お客様とのお時間を与えて下さったのかもしれないですね。



自分もそう思う・・・



鐸杜が掛けた、魔法の時間なのかもしれない。

“ 一期一会 ” と・・・  
             自分にくれた彼の名前。

自分の社員にも、一期一会の存在を、頭の中に心の中に植えつけて行った男。

このお店の存在を知れたのも偶然だった事に、マスターとの会話も、一期一会だと心から感じていた。



_____ お待たせいたしました。


花屋の方から声が掛かり、最後の一口を飲み干すと立ち上がった。


「 ご馳走様でした。 
  とても美味しかったです。 」


_____ いえ、こちらこそ・・・
    分かってくださる方に出会えて、嬉しいです。 
    
    よかった。本当によかった。
    実は、このRINDOHのカップだけは・・・
    お客様がお選びに成っても、成型を変えられてしまわない様
    私が必ず、お客様を確認するのです。

    どうぞ、また是非お見舞いのさいにでも・・・
    あぁ、すみません。ご退院が早い方がいいですね。


「 そうですね、でも自分は・・・ 
  友人が退院しても、また寄らせて頂きます。 」


_____ ありがとうございます。


会釈をして、花屋の方に向かって行った。支払いにカードを出していると・・・



________ チリ チリ チリ チリ

いらっしゃいませ。

________ チリ・チリン チリ チリ

いらっしゃいませ。

________ チリ・・チリ・チリ・・・

喫茶店の方のドアベル RINDOHの風鈴が、たくさん鳴っていた。


それには・・・

一息つこうとやって来た医者に医大生たちが、乱れた髪に笑顔を浮かべていた事に、建設現場の怪我人は無事だった様だと思っていた。




少しバタバタしているそちらに声を掛ける事無く、花を受け取って店を後にした。

チリチリと忙しなく鳴り続ける、鈴鐸の鈴の音に、鈴鳴り岬を思い出さずには居られなかった。


一期一会と心を込めて書かれた書に・・・


 “ ふふっ。鐸杜さまは、お茶器や花器にはご興味がおありでも
   お手前に関してはご興味が無い事は、前々から存じてますので ”


鈴音の乳母が笑いながら、茶室の方に案内してくれていた。

あの時はどうして窓が無いのかと、屋敷の横を歩いていて思案している時だった。

蝶子の野点の練習に付き合う気に成ったのも、茶の湯の心は一期一会だと・・・
怜とバルコニーで飲んで夕食時に飲んで、ぼ~っとした頭に欲しかったカフェインを頂戴しに行った時の昼前。

数日前のあの日の午後、鐸杜に出会った。

灯台の中から出て来たあの男。
初対面の土地の者でない俺に、きちんと苗字の名を告げていた。
その後、初めて鈴音の住んでいる森の中に連れて行かれて・・・


1つの出会いは、1つだけの時。

その“ 時 ”の出会いの中に、心を込めて心と心を通じ合わせるものだとの、母からの茶の湯を通しての教えにも、蝶子の野点の練習にも思い出さずには居られないものがあった。

店を出て信号待ちをしている正面に、病院が見える。

街灯の無い駐車場の道路際に停めた車の中に、タブレットを見ながら電話をしている人が、スモークの張られた車内の中に画面の光で居るのが遠目に見えた。


あぁ、さっきの人?・・・・


喫茶店にいた女性だったっけ?と、考えていた。電話が終わったのか、タブレットの画面が消えスモークの中に何も見えなくなると、駐車場を出て信号の向かい側に赤で止まった。

青に変わり渡っていると、曲がってきたその車は横断歩道の前で渡り切るのを待っていた。
運転手に軽く手を上げて、急ぎ足で横断歩道を渡りきる間に、なんだか運転手に会釈されたと思い振り返ったが、もうその車は居なかった。

どこかの会社の社用車だった様な気もするし、会った事がある様な人だったか・・・

まぁ、運転しているし、とても丁寧な運転にも秘書だろうと、大して気にしないまま駐車場を歩いていた。

自分の車の横を通り過ぎる時、ダッシュッボードに入れた鐸杜の名刺を思い浮かべて、ジャケットの上から胸のポケットに手を当てた。


明日、鈴鳴り岬に戻ったら・・・

真っ先に、1000円 支払いに向かってやるよ。



・・・・ 鐸杜 領 _________



初めて創った彼の作品。

鈴の音を響かせて・・・



  『 これだけは、無くせないんだよ。 』



無くせない物だと・・・ 自分に教えてくれた・・・ 

鍵をたくさん付けた、あの鈴。



教えてくれるだろうか・・・・



灯台の鍵の事を

・・・どうしても知りたいと、そちらの方ばかりを考えていた。



それに・・・


白猫の首に結ばれていた、紅色のリボンは・・・


鐸杜の名刺の木箱に結ばれた、片花の花びらに止まる蝶々結びだった事も・・・・・











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To be continued to Second half ................................


Myth. BLUE BELL * CM



......... but
before that ...........


Myth. BLUE BELL * CM





☆ こちらの作品は、2015/03/02 にUPしましたが、作品を一箇所に纏める為に日付をずらしました ☆





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mimi's world from Ren Tsuruga and Chuehonn Hizuri
Love Letter from RT and CH

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