mimi's world * HOPE and DESIRE

_______ BE-lie-VE * be-LIE ve * believe...the SHAMs for heart healing * mimi's world-7 _______

Myth. BLUE BELL - Last Act 2.2 - 

mimi's image music *G V Star. Pt.1 / Thugs / ...And then God built the Cosmos / Crushing Sphere in ORBIT




ふ ―――・・・



溜息を吐きながら、飲み物変えてと、傍仕えのメイドに目を向けた怜。


_____ かしこまりました。


膝の上に白猫をのせたまま、腕まくりをしていたから・・・


「 どうした? 溜息吐いちゃって。
  あぁ、毛だったら、気にしないよ。
  それとも・・・  暑いの? 」


「 うん、まぁね・・・
  ちょっと・・ あついか? 」


空になったハイボールのグラスを取り上げて、頬にあて目を瞑った怜を見ていた。

かしこまりましたとそっと邪魔する事無く言ったメイドは、何がいいかと聞くこともなく部屋を後にしていた。


________ カチャッ


そのメイドがドアを開けた時、怜の膝の上にいた白猫が飛び降りて、開いたドアから一緒にするっと出て行ってしまった。

怜以外誰一人居ない部屋に、代議士の良く通った声が、今これからの重要性を話しているのを聞いていた。

メイドが入ってくると・・・




________ チリ・・・ チリ・・・ チリ・・・



鈴の音を響かせて・・・

首に結ばれた 紫色の江戸更紗が目に鮮やかな、白猫が入ってきた。

自分の方に寄って来る白猫に、手を伸ばす・・・




「 鈴 おいで・・・ 」



にゃにゃっと言いながら走り寄る白猫を見ている怜に、メイドがグラスを置いた時だった。



ん?・・・

「 剣・・・ 知ってんの? 」


「 あぁ、怜の妹が教えてくれた。 」



そう・・・

怜のまだ隠している妹。 鈴音に教えてもらった・・・・



蝶子は京都に行っていて、今ここには居ないから、怜が直接蝶子に聞く事も無いだろうと考えていた。


「 この子は、レイ だろ? 
  さっきの白猫が、スズ で・・・ 」


「 あれ?2匹一緒に、同時にいたっけ? 」


実家に帰って来ても、なかなか2匹揃っていることないし・・・
剣が滞在していた数日の間に、2匹同時に屋敷に居たか?と、怜は頭を捻っていた。


「 だったっけ?・・かなぁ・・・」


ぼそぼそ言っている怜だけれど、朝帰りが多かったのでその事を誤魔化したいらしい・・・。
のと、二匹とも・・・

俺が2匹同時に見たのは、ここではなく飼い主である鈴音の屋敷だった。


「 何これ・・・」


ちょ~ 可愛くない?と、怜はレイの首に巻いている紫更紗のリボンの結び目を挿していた。


「 だろ? 」


床に差し出した両手の中に飛び込んで来たレイを抱き上げて、膝に乗せていると・・・


「 なに?・・だろ って? 」


怜が手を伸ばして、俺の膝の上のレイを撫でた。


「 これ、俺が結んだから。 」


え~~、そうなの!? 剣が結んだってか?と・・・

豪華な羽を広げた蝶々の形の結び目に、目を凝らしていた。


「 まぁ、帯結びみたいなもんだよ。 」


そう言ったけれど、この結び方は誰にも解く事の出来ない、父が結ぶ結び方だった。
たぶん、自分が東京に行っている間、ここの誰も解くことが出来なかったと思う。

難解な結び方に拳が出来たら抜けなくなり、はさみを入れて切る事は・・・

ご令嬢の大切なリボンに出来ないだろうと

きっとはさみを入れられるのは、夫人と蝶子と鈴音だけで、夫人も蝶子も居ない事に鈴音だけが出来る事だとも思い
でも、振袖を毎日着ている鈴音も蝶子も・・・

この豪華さゆえ解きたくないと思わせる結び目に・・・

どちらの猫か、自分で区別をつける為に結んだものだった。

Myth. BLUE BELL - Lsat Act1.2


これは・・・ 

一昨日の明け方、森の中で・・・



霞掛かった 紅の世界を思い出していた。




________ にゃぉ・・・



          自分の目の前を、1匹の白猫が歩いていた。

          数日前に来た時より、紅葉が舞い落ちて

          開けた場所は、朝靄掛かった深い紅の世界。


          立ち止まったその場所で、自分の手に付いた紅を見ていた。

          振り向いた白猫に・・・

          霞に紅が広がる、その両手を差し出した。




2匹の白猫・・・




          ________ シャラ シャラ シャラ 


          自分の前を軽快に、鈴の音を鳴らして
          紅葉を舞い上げながら歩く スズ ・・・



          猫に、森を案内されて帰って来た俺は

          目隠ししていなくても・・・

          闇の中にその道が分からなかった。

          ただスズの、シャラシャラという鈴の音に着いて・・・

          後ろを振り返ると、鬱蒼と昼でも暗い森の闇の中に

          白猫のレイが浮かんで見えるだけだった。
  


          自分の後ろから付いてきた白猫から
          鈴の音は鳴っていなかった。



          紅が付いた自分の指を見ていた時、手首に気が付いた。

          手首に結ばれていた紫更紗は

          鈴音とのお遊びで、時間の掛かる花月をした時

          花としての、おに 

          最後、自分が花を引き、鬼の証を結ばれたままだった。



          鐸杜の組み紐と同じ、片花に差し込んだだけの蝶結び。

          片手で簡単に解けるこの形に、何も考える事無く・・・

          自分の前を跳ねていた スズ が赤い絨毯の中で遊んでいる間

          後ろから着いて来た レイ に、この紫更紗のリボンを結んだ。

          また、ここに帰って来るまで・・・



          自分の立ち止まったこの場所は



          再建が始まるスタート地点だと

          父の残したままの廃墟の前で・・・

          一輪の蒼いりんどうが咲いていた場所



          結び終わったその手に落ちた

          朝靄の雫が・・・

          鈴音の紅を自分の手の中に滲ませて

          飛び跳ねる白猫の鈴の音が、心に浸透して

          両手を見詰めたまま握り締めた





明るくなり始めた情景の中、2匹の猫は紅葉を蹴り上げて、霞の中をさらに赤く・・・

ひらひらと浮かぶ紅葉のあかは、自分の足元を赤い霞・・・

紅雲 こううんで、包み込んでいた。






_____ じゃぁ、レイ は・・・・・



だぁれ だ  ――――― ・・・





うふふふ・・・ 
・・・ くすくす



な ・・

・・ り 

よ ・・・ 

・・・ し

 
さま 




「 あそこに・・・ 」








・・・ チリン ――――――













 チリン ・・・











________ チリン ・・・




「 なぁ、剣ってさ・・・」


グラスを傾けながら、怜が・・・ ナンデか分からない・・・。と言い出した。


「 女の子が好きそうなツボを
  たくさん持ってんのに・・・ 」


「 は? 壺 ・・・
  また、壺の話? 」


________ カタン


その壺じゃない。と、グラスをテーブルに置いた怜を見て、微笑んだ。


「 女の子の好みが、めっちゃ分かってて
  女の子受けする引き出しまで持ってんのに
  お前・・・
   ・・・どうして恋愛しないんだ? 」



まぁ、そんな事を言われても・・・
と言いつつ、確かに我社の受付部長も言っていた。

 “ 社長が、恋人に何かを頼んだのであれば・・・”

えぇ~っ! イヤ~~! とざわめく受付嬢達の姿。 社長と話せる部長以上の立場は男で固められている為、どんなに仕事をがんばっても、うちの社では俺と話す女の子は誰も居ない。

プライベートの噂は尽きないと・・・

鐸杜の名刺が届いた昨日、めちゃめちゃ社の中、その他のビルの中まで噂されていたらしい。
社長は有りもしないどうでもいい噂話に、ご興味は無いと存じますが・・・
その様な噂でも、1万近い社員の我社では、外に何かありましたらと思いまして、社長自ら宣言するなり、どうにかなりませんか?

と・・ 実際にいるのでは?と仄めかす部長も、来客に余計な事を言わないか見張るのも疲れたとまで・・・

言われましても・・・ 

居ないものは居ないのだからと、部下からビシッとバシっと伝えてもらっていた。

まぁ、鐸杜からの届き物は、怜には黙っていた方がいいかと考えて、その事は言うのを止めた。



怜は・・・・・





「 あのさ・・・ 」


そう言い出したから・・・


「 あぁ、そうそう。言っておくけど・・・
  怜に言われた通りじゃないから、俺。 」


はぁ? と思う怜だけど、たぶん直ぐに気がついた。


「 うちの社に剣が来る時もさ・・・
  ビシッとダークスーツに身を固めた
  モデル並みの男の部下達を引き連れて来んだろ。 」


んで? と、タブレットの画面を確かめながら聞いていた。


「 そうだから・・・ 」


続いて話す怜の言葉に先に答えた。


「 ニュートラルの剣の方が、怖い気がする? 」
「 ニュートラルの社長じゃないかって・・・」


怜と同時に言ったけれど、やっぱり同じ事を考えていた。

まぁ、ソレはベッドの中でのアノ話なので、コレとの意味は違うけれど・・・
・・・なの?と、両膝を椅子の上で抱えて、膝の上にグラスを置き、寄りかかっている怜を見ていた。


「 俺? 普通だよ。
  女の子しか、興味ないし。 」


だよな・・・。ゴシップとかめんどくさいし、時間も暇も無いってか?
そうそれ。その為に男で固めてる。

と・・・

言い寄ってくる女の子に邪険に出来ない俺だから、その為にお断りを考えるのも時間が勿体無い。
・・・ と考えての事だった。


アメリカから帰国して早々、初めて訪れた 今は自分のオフィスである社長室に、まだ父が座っていた時・・・

ビル正面の自動ドアを1歩も入らず、開いただけ~~・・・の時から、注目を浴びてしまっていた。

ビルに沿って歩いていた時、うちの社の高いビルの間を抜けるビル風に、髪がボサボサだった。
それを直しながら、ガラスの中に写る自分を見て歩いていた。
外から中が見えなかった自分でも、ミラーガラスの内側からは、目で追っていたと言われてから・・・

なので、少しでも視線を外したく・・・避けたく・・・・

色男ばかりを回りに固めた俺。

それは、あまりにデカイから目立ってるのか・・・ と思いつつ
自分の部下には、そのデカイ俺に合わせて、身長も同じぐらいの・・・。と思ったら、モデルの集団の様に自然と成っていた。
・・・だけだった。


仕事も出来るし、イコール学歴も頭の回転もいい。顔もいいしスタイルもいい、気遣いもバッチリな秘書軍団で、それに腕っ節もボディガードの様な彼ら、収入はもちろん良いと自分の部下に思う。

女の子の目を引く、そんな彼らに・・・

注目して~~・・・と、自分から視線を少しでも外したいだけだった。



「 いや・・・教えてやるよ。剣 」


それ、以外と・・・どうだ?って思うぞ。と・・・
グビッと煽りつつ怜が話し出したのは、怜の会社での事だった。


「 そのモデル & SP 秘書軍団。
  いい男だらけの中心に立ってるお前・・・
  ヤバイぐらい、カッコよさ上げてんぞ。 」


逆ぎゃく!逆効果じゃね? と言う怜に、そうか?視線が散らばらないか?いろんなタイプ別? と頭を捻る。


「 だって、取り仕切ってんだぞ。モデルSP達をっ! 
  目の前で、各種タイプ揃いも揃えたイイ男達を!
  取締る取締役のお前の方が、どう見たって・・・」


「 ん~~、まぁ部下に関しては、皆仕事が出来るし
  今さら替えるのも、今の部下に理由は無いし・・・」


怜の会社で噂になっても、俺は誰とも話した事は無い。怜の会社は女の子も怜の好みが多いと・・・
なんでか就任して直ぐ、シックに全員なった我が社の女の子に男性の社員。

華やかな怜の会社に、ふ~んと思う甘い香りに甘い視線。


いつも、わき目も振らず、ま~~っすぐ向かう俺。
ボソッとコソッと部下とヒソッと話す事は、仕事の事。だけど・・・


「 お前、時々するらしいな・・・
  モデル軍団と顔を寄せて話すって
  手袋外して、口元隠して・・・
  どうよ? それワザとか? 」
  

はぁっ?態となわけないし。金額が・・・と、言いかけた、大きな声で言えないだけの、金額話。
皮の手袋を外しながら話すのだって、10本の指で桁が足りないから。

Forbes のビリオネア世界長者番付に、お前の年収が載らなくてもな・・・と、躍起に成って言う怜は、載っていた。


「 あぁ、面倒くさくない?
  自分の年収にして自分が税金払うより
  会社からどうぞ、税金で納めますので。 」


そうそう、ちょ~いい税金支払う国民の1人だぞ。俺。と・・・
立て膝の怜の膝に、自社株式画面のタブレットをドシッと乗せた。


「 まぁな。国民の鑑かも。 」


「 だろ? 買収会社の社長だし
  その、会長の息子だし。 」


「 そう、だからクリーンな会社
  お前が作ってるそのイメージ。
  お前だって、そのままだよ。 」


一番需要かも~・・・と怜に言われて、確かに輝く満月の様に華やかかもしれない。
買いあさり、自分の理想をそこに建て、自分の夢で金を造るなんて、誰もがしたいことだろう。

影の裏に輝く影の月食の様に、闇に包まれている会社が多い俺の業界で・・・

その陰との付き合いも数知れず、多い俺・・・


次期首相候補の息子は、霞み掛かる光の裏で影として動き、もう1つ違う光を放つ光源である。
光に反射して輝く月ではなく・・・

光を反射した裏の森の中ではなく、灯台の様に光の基もこなす怜・・・

りょう方に・・・

大変だろうと心から思う。



________ シャラ・・・  



_____ 失礼いたします・・・


「 どうぞ・・・」


テーブルにタイミングを見計らって、時間の経った皿を下げ、飲み物に合わせて軽くつまめる物を新しく出すメイドに返事をしていた。
その時に来たのか、スズの鈴の音が自分たちの足元で鳴っていた。


「 あのさ、何本かとグラス置いて。 」


_____ かしこまりました


怜が傍仕えのメイドにそう言うと、直ぐに怜の好みのリカーが並べられた。
ありがと。と、スズを抱き上げて返事をした怜だったけれど・・・

言葉を返しつつ、視線はドアの方に向けていたから、出て行ってと言いたい事ぐらい分かる様に成った。



________ パタン・・・


音も静かにドアが閉ると、怜が話し出した。


「 剣ってさ・・・
  根本的に優しすぎる。 」


なんで?と飲みながら返したら、周りにいつも気を使うところ。と・・・


「 なんで、メイドを出したか?
  剣が、気を使いすぎるから・・・
  可哀そうな奴だな、って思って 」


「 ん~~、そうか? 」


自分が思っている以上に、周りを気にしていると周りは思っているのかも知れないと感じていた。


「 なぁ・・・怜、俺。その・・・
  気を使いすぎる奴なのかもしれない。 」


あぁ~・・・・憲法変えてくれ。


そ~んな風に、怜に懇願しても、今はただの議員秘書。
全く権利が無いのは分かっているけれど、テーブルに両腕を付いて頭を埋めた。

膝上のレイが頬をぺろっと舐めて・・・

ナニナニ?どうした、急に・・・と頭をナデナデしてくれる、お兄ちゃんみたいな怜に、テーブルに突っ伏したまま顔だけ向けた。


「 あのさ、俺・・・結婚は・・・ 」


そう言いかけて、レイを怜の方に差し出した。
膝の上にスズも居るのに、うっかり受け取った怜は、レイを肩に抱っこしていた。

ぽんぽんとレイの背中を叩く怜に、器用にぎゅっと怜に抱きつくレイ。


「 実はこれ・・・ 」


すっとタブレットケースの中から取り出しながら、反対の手で怜の膝に居るスズを抱き上げた。

さっき夕暮れまで、GPSにサテライトマップ。携帯の画面じゃ小さいのでタブレットも持って出ていた。
通用門に行く途中・・・

庭の植木の1本に風に揺れていた。



・・・紅色のリボン



ここに来た初めの夜、紅が掠めた様に見えたその植樹・・・

前、確かめた時には、無かったはずの紅色の このリボン。

自分の目を掠めたその場所に、風に揺れているのを見つけた さっき・・・


猫、あの時は、スズなのかレイなのか・・・

どちらかは、分からないけれど・・・

首に結ばれていたから、あの時から枝に掛かっていた訳でない事も

その次の日、蝶子も鈴音も着けていた事を思い出していた。



鈴音は・・・ 天女の様な白い振袖で、

蝶子は、豪華な金糸の赤い振袖だった事も覚えている。



「 怜・・・ 
  ・・俺・・・ 」


________ にゃぉ・・・

   シャラ シャラ・・シャラ・・・


膝にスズを乗せ、取り出した紅色のリボンをスズの首に結び始めた。

きっと怜が目の前で見たら分かるだろうと・・・

白猫が初めて部屋に遊びに来た時、結ばれていたこの紅色のリボン。



あの時見たまま、同じ様に・・・ 

誰かがこの子にした、その結び方。



鐸杜の組み紐と同じ、長さを変えた片花に、長い残りを同じ大きさの羽に挟んだだけ・・・

半分は完璧な蝶なのに、もう片方は見せかけの・・・その蝶結びに結んだ。


怜は、あぁ俺がそーいや・・・ そうそう、窓から飛んでったんだった。と紅色のリボンのなんかを言っているけれど、次の日の蝶子は、結い髪に何も着けず紋付で、茶会の予行練習をしたいと俺に言った。

だから、どちらの物か分からないと・・怜もそうだと・・・


「 俺、好きな子が居る・・・
  確か、そう言ったよな。 」


んで?と頬をぺろっとレイに舐められながら、くすぐったそうにしている怜が返す言葉を待たなかった。


「 あのさ、結婚はすきなことしたいって
  それ・・・
  あのメールの意味は・・・ 両方
  ・・かな・・・・ 」


「 まぁ、剣がそういうなら、いいんじゃん?
  あれだろ、人生の好きな事したいってのと、
  好きな子との、両方が一致するんなら・・・ 」



怜、俺・・・・  ただし・・・



「 ・・・ただ・・
    ・・・自分の気持ちが分からない。 」



「 はぁ?だから、その両方が一致するんなら
  ちょ~~いいって、思うけどね・・・  」


レイに舐められた頬をナフキンで拭きながら、怜は分かってくれなかった。



「 そう・・そう思う? じゃぁ・・・」


目を瞑って、スズの頭を撫でると、怜の方に目を開け視線を正面から合わせた。


「 俺、この紅色のリボンの子。 
  
  怜・・・お前の妹を、
  鳴良に貰ってもいいんだよな。 」



俺、買収企業の社長だぞ。財閥の敵だろが・・・と、妹の行く末、そして怜と代議士の世間体も考えた。
世間から嫌われる業者種のでかい企業帯を持っている会長の息子の俺が、怜の会社で噂になる理由も分からない。
噂といったら、嫌な奴だと思われていると・・・

思っていたけれど・・・


・・・ニッ と笑った、怜の顔に、ゴクッと息を飲んだ。

だから・・・・・



「 このリボンの持ち主と・・・
  ・・・結婚したいって思ってる 」




目を瞑ると思い出す・・・


心が震える、この感覚 _______ . . .




________ チリ チリ チリ チリ・・・


首に結ばれたリボンがくすぐったいのか、首を横に振るスズを胸に抱きしめた。


この紅色のリボンは、蝶子も鈴音も同じ様でも・・・

あの時はこの結び方を間近で見ても、ふ~んと思っただけで・・・
鐸杜の組み紐を見た今なら、蝶子を仲間外れにした鐸杜が、鈴音とは仲良しだという事に
鈴音のものだと自分では、結び方にも思っていた。

右と左と・・・同じ着物の袂から取った古布は、元の振袖を見なければ違いが分からないものだった。
両方を手に取って、その振袖を目の前で見た俺には違いは分かったけれど、家族愛の薄いと感じた怜は・・・



「 あれ、もしかして・・・
  剣、鈴音に会った ? 」


さらっと言った怜は、この紅色のリボンが鈴音のものだと分かっていた。


「 あぁ・・・ 」


「 鈴音の屋敷には・・・
  月に一度必ず行くよ。 」


そう・・・



今まで自分に隠してこられた、隠された妹の存在は、伝える機会が無かっただけだと



・・そう・・・




  それじゃ・・・


そう言った怜だけど・・・・


家族愛が薄いのではなく、蝶子より鈴音の方が可愛がっていると感じていた。
鐸杜と同じ様だと思うと・・・
今朝、怜の車で東京を経つ時に、掠めた怜のとある部分を見詰めていた。


「 だからな、怜・・・」


ぎゅ~っとスズを胸に抱きしめて、スズの頭に頬を寄せた。

んで?と返す怜も、同じ様にレイをぎゅ~~っと抱きしめて頭に頬を寄せていた。
  


「 ・・・憲法。変えてくれ。 」


はぁ?何に?

意味が分からんという表情の怜の首元に、レイもぎゅっと抱きついていた。


「 一夫多妻制  」


日本国憲法を変えてくれ~ぇ~と、懇願しても、絶対にムリだろう。
でも、愛人のいる怜には、俺の気持ちが分かってくれるのだろうか・・・


「 なに? 剣の好きな子って・・・ 
  双子のどちらかが分からないって事? 」


「 ・・・そう、そのどちらか 」


両方っての、どうしても・・・ダメだよな。
頼まれたら、お断りに時間を要する自分自身の事ぐらい、自分だって知っている。


「 本妻と妾は? 」


簡単にそんな答えを、さらっと考えなくヒヤッと言い出せる怜が羨ましい。

それじゃぁ、結婚はしないほうがいい。と、抱きしめているスズに顔を付け、プイっとそっぽを向いた。 


「 お前、子供か?
  ・・・って~の。 」


もぉ・・・俺も恋愛感情なしに結婚して、恋愛のウンヌンは結婚してから分かる様に成ったけど、恋愛のレンもしてない男が、誰かを好きになったら・・・ 
                 ・・ってか・・・・

そこまで言った怜は、気が付いたみたいだった。



「 なぁ、もしかして・・・ 
  両方に頼まれた? 」


お前、断れないし放置できない性格の奴だし。と、怜はレイの肉球で俺の頭をペチペチ叩き、そう言うけれど、プイっとそっぽを向いたまま、氷の解けたグラスに手を伸ばした。


しかたないだろ、レンなんだから・・・と、ぼそっと言い・・・
グイッと溶けた温っる~い氷水を飲んで言葉を濁し、グラスをテーブルに置くと


________ カラン・・・
    
 ・・・トク トク トク


グラスの中に氷と何かを注ぐ音がした。


「 ほら、冷やせ。 」


持っていたグラスではなく、そっぽを向いた頬に違う冷たいグラスを、ピタッと乗せられた。


「 それとも、おでこか? 
  ん? おい・・・レン。 」


「 もう、剣でもレンでも、どっちでもいい・・・」


そう言いながら、空のグラスを持っていた手を、そっぽを向いた方にちょ~どあったタブレットに向けた。

頬を冷やされ、猫を抱いたまま、タブレットを見ていたら・・・

すっと目の前に、グラスを差し出された。



「 なぁ、剣。悪いけど・・・ 」


何?と言って、目の前に差し出された冷たいグラスに手を移した。
  

「 ゆっくり、もう少しだけ・・・
  時間を掛けてくれないか? 」


そう言った怜からグラスを受け取り、怜の方に身体を起こした。


「 時間を掛けても、いいのなら。 」


心から喜んで。と、微笑んで返した言葉に・・・


「 山延の復活が・・・ 」
「 山延が治る時・・・ 」


そう、同じ事を考えていたかもしれない。
怜自身の人生にも欲しい、官房長官を経てから
同時に言った言葉のそれに、自分の気持ちにも・・・時間が欲しいとは、心から思っていたことだった。



「 乾杯? 」


「 乾杯なのかは・・・ 」



________  チリン・・・


2人があわせた、紅色のブランデーに・・・


「 おい、怜・・・ 」


知らん顔で自分のグラスを一気に飲んだ怜を見た。


「 ブランデーに氷、入れんなよな。 」


常温じゃないと上手くないよな~と言う怜の方は、入っていなかった。
でも・・・

大粒の氷の表面に、テレビの中の代議士と、タブレットの自社グラフと、抱いているスズの紅色のリボンが

ほんのり溶けた氷の表面を落ちる、見えない水滴の中に、キラキラ輝いていた。



二匹の白猫は、双子の様に、同時にそれぞれの膝から飛び降りようとした。

でも、俺も怜も・・・

片腕でぎゅ~っと抱きしめたまま・・・



・・・それには



「 付き合いだしたら・・・ 
  拘束するSだろ? 」



「 フッ。どうだろう 
  ・・・・いや・・

  怜よりは・・・ 」




意地悪された冷たいグラスを口に付け、言葉を濁しつつ

色々な意味で・・・ 拘束。


人の人生も人付き合いも拘束する怜だとも、その中心に入りたいと思う自分の気持ちも・・・

どちらなのか分からない、青い炎と赤い炎がまだ・・・

心の中で揺らめいていた。




チリ チリ ・・・

シャラ ・・シャラ





2匹の白猫は・・・



黒いセーターの俺に白い毛を付け

腕まくりをした怜の腕に爪を食い込ませ

暴れて抵抗しても・・・





ふふ・・・

・・・ふっ





俺達は、拘束の腕を緩めないまま

紅く芳しいグラスの中身を、一気に飲み干した。









チリ チリ チリ・・・


・・・シャラ シャラ・・・






______ この森は、とても広い


    たくさんの花が咲き、大きく伸びる樹に時間を感じ季節を愛でる

    風が揺らし、造る木漏れ日に

    青い空が見えると・・・       

                      ・・・幸せ________ 

    
    空の色と同じ花の広がる絨毯の様に、この森の中でただ一箇所

    蒼いりんどうだけが咲き、広がる場所が・・・

                      ・・・好き_________

     
    幸せだと思うその場所が・・・

    
    好きな程想うその場所が・・・


    
    この場所に ____________







チリン・・・


・・・シャラ 


2つの鈴の音が耳に届く







一昨日の明け方、森の中で・・・

紅が霞に滲む・・・



自分の唇に付いた彼女の紅に染まった両手。


触れた唇は、抹茶の味がして・・・

上手に点てられたお茶に、苦味を感じはしなかった。



手についた彼女の紅を擦り合わせ、手の平を開いたら


ポツ・・

  ・・ポツ・・・

    ・・・ポツ・・・・


雨が降ってきたかと思う、見ていたままの手の平に落ちる水滴。

見上げたら、霧の中に白む空が見えて

靄のかかる冷たい空気に冷やされた靄が、水滴となって廃墟の鉄骨から りんどうの香りを運ぶ風に降り注いぎ、自分を濡らしていた。


自分の擦り合わせた両手の中に

滲み滴る紅が広がって・・・



ポタ・・・


   ・・ポタ・・・


      ・・ポタ・・・・



手の平で寄り集まった紅い水滴が、零れ落ちた足元に・・・

自分が花だけ摘み取った、頭の無い茎だけのりんどうがあった。


竜胆の葉に付いた紅が・・・

藍の紫の葉の様に見えて、ただその場に立ったままでいた。


自分の手首に結ばれていた、紫更紗の彼女のリボン。

深い緑の葉に紅が落ちただけなのに、視線の途中で重なった紫のリボンの色に、自分の摘んだ花が あい だと思わされていた。



自分の頭の中に思い浮かぶ・・・

・・・怜との会話 ________ . . .




『 なぁ・・・ もしかして・・・ 』

『 あぁ・・・ 』



同じ事を考えていると、思っただけだけど・・・



鳴海家に生まれ育った怜には、茶道具に “ 金の代わりに銀を使う ” 手の込んだ逸品ばかりだと、知っている事だと考えていた。


毒の反応が出ない、金の代わりに・・・

生きた証を残される事を嫌う、銀・・・



“ 人の命を奪う ”と直接いうより、“ 生きながら殺される ”といった方が正しいと思っていた。


隠されて育てられた鈴音にしろ、背中から押しても繋がっていると ほくそ笑む怜に・・・

死ぬ事はないから安心しろと言われても、自己を殺されて生きる意味に、殺された方がましだろ。と・・・

又・・・ 冷たい笑みに隠す。





        自分で死ね







        その勇気を・・・






        モテルモノナラ

          モッテミロ







      ・・いや・・・


        言い方に、品が無いよな・・・



_____ ごめん、ごめん・・・・・







        自ら その手で


        追いやるほど、到らしめたら・・・








天辺から突き落とされて底辺に落ちても衝突する危険は無く底辺以下の苦境に心を停止させ息を止めろ


      ・・・いや・・


        天辺に至ったら・・・






        絶頂に恍惚の快感が待っている事ぐらい






        シッテイルヨナ







_____ ハッ、ハッ ハ―――・・・




クスクス・・・・
 

・・・・ うふふふ _________







笑い声が頭に響き渡っていた。




・・ 天辺とは ________ . . .



人が神に召される時に、羽が背中に生えて その空に、自ら飛び出す

その見えない姿が、空の彼方に消えるまで・・・

祈りと共に見送り、自らが飛び立った意志を、空に向けて欲しいと願う。


向かうその先・・・




蒼く煌いて目に届く深い霞は


白いのだろう


光に反射して映されて・・・


そう人の目に見えるだけだと、この心に ___________





下から見上げる奴には・・・





この手首に結ばれていた紫更紗は、片花に差し込んだだけの蝶結びだった。

片手で解けるこの形に、簡単に解き・・・

自分の前を跳ねていた スズ が紅葉の赤い絨毯の中で遊んでいる間

後ろから着いて来た レイ に両手を伸ばした。



「 鈴レイ おいで・・・ 」


_____ にゃぉん

さっき気味の悪い本能の声を、自分の耳に押し付けていたレイではなかった。 


レイが足元に擦り寄って、手首から外したリボンを結んだ。

また、ここに帰って来るまで・・・

誰にも解けない様に・・・ 


そう考えて、父から教えられた結びに結んだ。





________ チリ ・・チリン・・・



結び終えたら、ポケットから取り出した・・・

錫で出来た小さな鈴。


中を覗くと 鐸杜の創った物だと、明るくなってきた森の中に輝いた刻印・・・・

鐸杜が初めて創ったものと同じ、音が・・・



________ チリ チリ チリ・・ チリ チリチリ チリチリ・・・


鈴を失った首輪に鈴を付け、リボンを結んだからか、レイは首を横に振って音を鳴らし続けている。

その音が・・・

同じ音なのかどうかも分からない自分に・・・


見えないものを、掴もうとする自分を重ねていた。


 “ お前がかくしているものと同じ・・ってとこか? ”


隠しても何かが見えたのか、価値を生み出す 自分と同じ意味の職業を持つアイツには、何かを感じ取って見えるのだろう。

その才能が、彼が世界で求められる意味だと・・・

人の心を詠む事に、見せ掛けに騙されるなと言われている様だと、彼の声が頭の中に鈴の音と成って響き廻り犯していた。




2匹の猫に、森を案内されて帰って来た俺は、目隠ししていなくても・・・


 “・・・そう。じゃぁ、目隠しは? ”

 “ あぁ、必要ない。 ”


闇の中にその道が分からなかった。ただスズの、鐸杜が産み出したシャラシャラという鈴の音に追いて・・・

スタスタと先を歩いて森の中を行く、アイツの背中を思い出していた。



・・・懐かしい


そう感じていた森の中に今は感じる事はなく

思い出したのは・・・



________ シャラ・・ シャラ・・・・



今と同じ、スズの音色に、白い振袖を翻して・・・

・・・微笑んだ紅色の唇。



歩いてきた彼女の居る方向に振り返っても、鬱蒼と昼でも暗い森の闇の中に、白猫のレイが浮かんで見えるだけだった。



 “ モウ・・ モ ド ッ テ ハ ナ リ マ セ ヌ ”


急に乳母の声が聞こえた様に、鈴の音と白猫の雄叫びと肉声ではない声が、混ざって頭をくるくる回っていた。





透き通り溢れ続く水の上で、くるくる動き回る走馬灯の様に

色々な彩の影絵が映し出した、窓の無い屋敷の壁




窓の無いそちらの方に連れて行かれた気がしていて・・・





_____ じゃぁ、レイは・・・




_____ 見ておりますよ。
    なりよしさまを・・・
 





「 階段の手すりに座って・・・」



後ろから、同じ声が唇を塞いでいても聞こえ

唇を離して、目の前で紅色の唇が動く。

両腕を頭の周りに回されて、着物の袂で隠された視界に

両手を握っている感覚は、彼女の頭の後ろと背中・・・



結い髪の彼女に隠されている視界の中は、紅い幕に覆われている様で




 鈴音お嬢様・・・ ________. . .




_____ 鈴音さま・・・





同じ乳母の声までも、後ろから上から聞こえていた。





クスクス・・・


_____ だぁれだ・・・



目を閉じる様に、紅色の唇が瞼の上にちゅっと音を立てて

咄嗟に触れた唇に、目を瞑った自分。


するっと拘束が緩んで、右頬を温かい指先に撫でられて、左頬に冷たい指先に優しく包まれた。



スゥ――・・・


大きく息を吸い込んだら


「 ・・・もういいかい? 」


目を瞑ったままそう言えば・・・






_____ まぁだ だよ。






後ろから声が聞こえて・・・・





フ ・・・―――


深く静かに息を吐いて


「 もういいかい・・・」


もう一度同じ事を言うと・・・






「 では、お付き合い
  ねがえるのですね・・・」




鈴音の前から聞こえた声に・・・

目を開けた時 ________



 シャラ・・・―――――

________ にゃぁん・・・

 ・・・にゃお――


________  シャラ・・ シャラ・・・ シャラ・・・・




下ろした長い黒髪に揺れる紅色のリボンが一瞬見えて

目の前の鈴音が、俯いた顔をふっと上げたら・・・


口角を上げてニッと笑い



ゆっくりと、瞬きをして目を開いたら・・・


頬を緩ませて優しく微笑み



右と左に瞳だけを動かして外す視線に・・・


無表情でフッと鼻で笑い



下から顔を覗き込み・・・



うふふ・・・
・・・くすっ

・・クスクス
うふっ・・・
 
クスッ・・・
・・・ウフフ

・・・うふっ
クスクス・・

くすくす・・
・・・ウフッ
 
・・・ウフフ
くすくす・・

ウフッ・・・
・・・くすっ
 
・・・くすっ
クスッ・・・

ウフフ・・・
・・・うふふ
 



にゃおん・・・ _________

 ________ ・・・にゃぉっ

「 もう、いいよ・・・」
 もういいよ ―――――・・

_____もう・・いいよ・・・
・・・・・にゃん 
 
にゃっ ・・・―――





鈴音・・ 


「 ・・・もういいよ。 」


重なる笑いと猫の鳴き声に、目の前の彼女の肩を両手で掴んで揺すりながら、そう答えた時 




________ パチッ 






ラップ音の様に、短く高く響いた音がして・・・



肩を掴んでいる鈴音すら、その音に顔を横に向けて見ていた。

頭を抱き寄せられていた鈴音の腕が、肩を自分と同じ様に肩を掴んでいて

視界を閉ざされていた着物の袂は無く、彼女の向いた方に目を向けた。



この廊下にも、階段上の廊下にも並ぶ・・・

鳴海りょうの肖像画



高い天井の上から、一つ一つの肖像画を、それぞれ照らすライトの1つが、消えていた。


目を向けたその場所・・・・




「 あそこに・・・ 」

______ チリ チリン・・・

くすっ・・・





目に飛びこんだのは、ライトの消えた肖像画・・・

薄暗く広い廊下に、その人物は見えなくても


髪を結い上げ蒼い紋付の鈴音が向けた指先は・・・

階段の手すりに座る、1匹の猫だった。




うふふふ

くすくす




「 レイって・・・ 」



「 わたしの猫 」


7人の令を名に持つ肖像画の前、階段の手すりからピョンと飛び降りた白猫の鈴 レイ

レイを目で追っていた。



________ シャラ・・・


足元に聞こえる鈴の音に、ふわっとした感覚が擦り寄っていた。



________ にゃおん・・・

なりよし さま


「 こちらが、スズです。 」


鈴音と同じ 鈴 の名に、レイとスズの2匹の猫が足元に寄って来ていた。


「 では、鳴良さま・・・どうぞ、お付き合いくださいませ。 」



肩に置かれていた手がそのまま腕を伝って下りてきて、両手を引かれ・・・

階段の方に向かって引っ張って行く。



蒼と紅の 
    ・・・着物の色に

青と赤の 
    ・・・炎の様な感情の彩に



引かれていく両手を握り締めた。




心が知っているって・・・

そうだったんだって・・・


     ・・・分かったような気がした。





見えないものを見える形に出来ても、掴めないものがある。

人はそれを、幻と呼ぶのだろう

見えないものを思い描き、想いを馳せるものがある。

人はそれを、想像と呼ぶのだろう


空想の彼方にある 幻と

想像の先に存る 創造と



見えないものは見えないままに、憧れ続けるだけなのか

見えないものを摘めるように、自ら生み出すのか・・・




人が神に召される時に、羽が背中に生えて その空に、自ら飛び出す

その見えない姿が、空の彼方に消えるまで・・・

祈りと共に見送り、自らが飛び立った意志を、空に向けて欲しいと願う。



その天辺に至る者と・・・

底辺から願い送る者




2つのそれぞれが




目を向けるその先・・・


手を伸ばしても、見えない先の霞の中に、何が触れるのか怖いだけ






分からなかった自分の2つの感情に、なんだか・・・ 分かったような気がした だけ・・・ ________ . . .




「 では、もう一服、どうぞ。 」




________ チリッ


階段の下で、小さな鈴を、足先で蹴っていた。



チリ  チリ・・ 
チリ・・ チリ・・・
・・チリ・・・ 


小さな音を立てて転がる鈴に、鈴音の手を離し

落ちていた鈴を拾い上げ、彼女の方に振り返ったら・・・

その場に、鈴音はもう・・・


居なかった ________ . . .






_____ お嬢さまは、お茶室に走って行かれましたよ ・・・


鈴音の乳母が話しながら近寄ってきて、視線の先の老婢は階段の上で、彼女を追っているのだろうか・・・

ゆっくりな歩調の老婢の先に


パタパタ・・・ 

       ・・・・パタ パタ  
タカ タカ・・・ _________


                 パタ パタ・・・・・



________ シャラ シャラ・・・シャラ・・・・ 




鈴音が走る足音と、スズの首に鳴る鈴の音が・・・

広い廊下に響き遠ざかって行った ________. . .









薄暗い森の道に浮かぶ、白猫の仄かな月光の反射 ・・・・・



________ シャラ・・ シャラ・・ シャラ・・・


前に鈴の音を響かせて、こっちだと自分を見失うんじゃないと言い聞かせている様で・・・


振り返ると、無音の白い共鳴の灯り。

鈴を失ったもう一匹の白猫が、戻る事を憚っている様に・・・



________ ギャォ―・・ ニャォォ―――・・・・


西に沈んだ月に雄叫びを叫んでいた。

霞掛かり始めた一日で一番冷たい空気の中、鬱蒼と生い茂った森の樹々さえ、風に揺れる音だけで見えなかった。



________ チリ・・・



ポケットの中に握り締めていた、白銀の鈴は・・・

柔らかさに握り絞めても、容を変える事無くて

音の鳴らない沈黙に、容を好みに変えられても

音の鳴るその響きに、果てない先まで届く様に

その容は、変わらなかった。



________ にゃぉ・・・


振り返った自分に、走り寄ってくる白猫のレイ。

階段で無くした鈴を首輪に付け、手首に巻かれていたリボンを結んだ。



紫の江戸更紗

目隠しをされて連れて行かれた、この森には・・・



蒼も・・・

紅も・・・



時の移り変わりに彩が変わり

その度に、心の中は、何処か・・・

遠い彼方に翔ばされていた。




白猫は紅葉を蹴り上げて、霞の中に紅を散らし空気の中を赤く彩っていた。

薄明るくなったその情景に気が付いた時、ぼんやりと樹々の形が見えてきた。

灯台の定期的なチカチカしている光の方に向かえば、岬の方に出られると

行く手を遮る闇の中、浮かびあがる白猫は、そちらの方に向かっていた。

二匹の猫に連れられて、自分が見た風景は・・・

ただ、灯台の光を反射していただけの


廃墟のある、りんどうを摘んだ森にいた ___________









十月十日


月食の夜


瘧の世界に


あい・・・


藍霞の味と


唇に付いた紅


こううん・・


紅雲の霞の中


空が白み始め


雲に紅かかる






十月十日 の朝・・・

子が生まれる時を、命の始まりとして・・・

一日始まりの太陽が昇る、朝だと







ちょう の字に・・・




心の中に霞広がる



朝靄の晴れる時




そうか . . .

Myth. BLUE BELL Last Act




. . . 蒼花







キャッ きゃ・・・

・・・きゃっ キャ


うふふ・・・         ・・・くすっ





           TO........... Myth. BLUE BELL - Last Act







☆ こちらの作品は、2015/04/07 にUPしましたが、作品を一箇所に纏める為に日付をずらしました ☆






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mimi's world from Ren Tsuruga and Chuehonn Hizuri
Love Letter from RT and CH

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