mimi's world * HOPE and DESIRE

_______ BE-lie-VE * be-LIE ve * believe...the SHAMs for heart healing * mimi's world-7 _______

Myth. BLUE BELL - Last Act 3.2 - 

mimi's image music * Halo Theme / Stella's Theme by William Joseph






その夜・・・・




昨夜俺達は、入院している山延から、向かい側の死にそうだったオヤジが生き延びたという連絡を受けたのと同時に、山延も退院の見通しが立ったと聞いていた。


山延の退院は俺達にとってとても嬉しい事だけれど、その前に・・・

向かい側が、どうにか成っちゃったりしたらいいのに。なんて、不謹慎な酔っ払いと化していた。


「 でも、もしかしてさ・・・ 」


「 あぁ、実は俺もふと・・・ 」


まぁ、それは、無いと・・・ 自分達を会わせてくれた親友を疑いたくは無いと思いつつ

2人ともが、同じ事を考えていたと思う。



俺達にとっても・・・ 便利だった事。

あらゆる企業のお偉いさんに、その秘書たち

さりげない会話の中、引っ掛かる重鎮達の状態に会社の状況



昨日見ていた自社株式


山延の代理人にサインをさせなかった、俺が試した事・・・



代理人に受け渡された書類に、山延の力強いサインが書かれていた事を、会合後に部下に渡されていた。


会合までの隙間時間・・・

怜の会社も引き込む為に、山延は即座にサインを入れておきながら

怜も知らないその間、怜が1%のリスクを負ったら、代理人の時間証明付きできちんと俺に回してきた事。


山延の会社は、アジアの時間差で動いていた。


山延の会社の株が動き出すのも、俺の社と同じだった。のと・・・

アメリカ外資のインベストメント会社。
もしも向かい側のXXリミテッドのアジアの影を追っていたのだったら、俺と会合の相手の繫がりを利用出来るまで
自社にリスクを負わない方向で、ジワジワ 監視していたかもしれないと・・・


向かい側の会長が途中で死んだら困るのは、山延だった。



  病弱に見えるか、見えないか

しっかり書かれたサインに、即座の行動に



血繫がりだけの為に、人生を捧げられる様で、重すぎると思っていた山延の結婚。

でもそれが・・・

病気を俺が疑う一要因の中の1つだった事。



結婚する事に躊躇いも無い アイツは・・・

態と絶食する事ぐらい簡単に、人生を賭ける奴かもしれない___________








数日前、同じ様にたくさん飲んだ、あの夜・・・

怜と見た月は殆んど丸く

蒼い影に隠される事なく、輝き続けていた 事


でも・・・

 ・・・違う

繰り返し・・・・



そして、今夜も、同じ様に、輝き続ける

少し反対側に欠け始めた月が・・・

鈴鳴り岬を照らしていた







みつ月の夜咲さく 夜の起こり ________



2人の母親がひとりの父親の子を その夜同時に 満月(みつげつ)出産を迎えた。


十の新月を数え

十の満月を数え

十月十日の日を数え

今か今かと待ちわびる 母親が鈴鳴り岬に2人いた。






昨夜・・・

怜と遅くまで、じゃれ合う二匹の猫を交えて、何かを心に決めていた


・・・はずだった ________ . . .






この日の夜も、料亭に怜に誘われていったものの、確かめたかった人は居なかった。

病院の前にある喫茶店に居た、女性・・・

怜の秘書だと云う事は、直ぐに分かった事だった。

喫茶店の外を歩き、ビル風に長い髪を片肩に纏めた横顔に・・・



着物を着て、長い髪を結い上げ、紅玉のかんざしを挿していた女性

袂で隠した横顔と、髪を纏めて押さえる横顔

・・・その横顔が、とても似ていると思っていた。



若女将の顔を確かめたかったけれど、彼女は座敷に今日は出ていないと・・・

怜が料亭に着く前に車の中で言っていた。


それに・・・

どうして知っているのかと思っていたけれど

怜はその時、無言で窓の外を眺めていた。



屋敷に代議士の姿は無くても、怜が送ってくれたメールの通り・・・

代議士は双子で、鐸杜家をそのままついでいる兄は、今朝岬で釣りをしていた。


料亭から返ってきても、怜とたった2人の屋敷の中。

この前と同じ部屋に泊まっていて、開けた窓から燃える匂いが入ってきて窓を閉めた。




________ にゃぉ・・・


 カリカリ・・・

  ・・・カリカリ・・・



ドアを開けると、紅色のリボンを着けたスズが居た。


「 スズ、おいで。 」


足元に擦り寄ってきたものの、両手を差し出しても手の中に入ってこなくて、プイっと廊下を走っていった。


夜中・・・

他にこの階を使う客も居るわけなく、メイドも誰一人としていない遅くに帰宅した俺達。


スズの走って行く廊下の照明は、点けられたまま
同じドアが並んでいて、全部のドアが閉まっている。

肖像画がずらっと並ぶ、鈴音の屋敷の廊下を思い出して、見ていたら・・・

たった一つのドアの前に、レイが居た。



________ シャラ シャラ シャラ・・・


スズがレイのところまで走り寄ると、二匹の白猫がつけた首輪の鈴が、白銀に輝いていた。

二匹がいるドアの隙間からは、光が漏れている。

体でドアを猫が押したら、音も無く簡単にドアは開き、その中に二匹とも入って行った。



ドアの正面の壁には、揺れる朱色の光・・・

その赤い光が火の様で、窓から入ってきた燃える匂いに、火事かと思い近づいた。



そこは、自分も入った事がある・・・

客用の居間。

猫が開けた半分だけ開いたドアを覗くと、暖炉の前に

燃え盛る炎を正面に受けて、炎を見詰める怜の横顔が見えた ________. . .



白猫が開けたドアにスッと無意識に手を向けて、ノックをしようと思ったけれど

自分の頭の中に現れたのは、炉の前で居前を正した鈴音の姿だった。


月食の暗闇に、炉の淦赤と燃える炎に燃える様に浮かんでいた彼女の姿。



自分に・・・

  『 この・・・人々よりの心を感じ、心癒す
    恩愛への感謝と、真の相を学ぶ事を・・・ 』


  大変喜ばしく ・・・・


幾千の時の流れの中、鳴海の歴史に生まれ生きる事を、小さな胸の中の

蒼く消えそうな弱々しい存在でも、明々と心に感じ

代々の証名を受け継いで、大変喜ばしく・・・ と言っていた、彼女・・・




その兄・・・怜は、似た面影の横顔を、暖炉の前で見せていた。


床に胡坐で座る怜の周りには、書類が入っている箱に封筒がある。

ブランデーの瓶に、切子のタンブラー それと・・・


_______ パチッ パチッ


  燃える炎の音と・・・


________ トク トク トク


  グラスに注ぐ音・・・


________ チリ・・ チリ・・・ 

     ・・・シャラ ・・シャラ・・・  


猫が二匹、怜の胡坐の膝に乗っかっていた。

怜が封筒を開けると、中の書類を何も見ずに数枚ずつ、暖炉の炎の中に入れている。

タンブラーを持ち上げて一口飲むと、また数枚炎の中に投げ入れた。


________ にゃぁ・・・


膝の上のレイがドア口の俺に気付き、声を上げたから・・・


________ コン・コン・・・


ドアに向けていたままだった手で、ノックした。

怜が振り返ると同時に、膝の上の猫が立ち上がると、怜はポケットに手を入れて・・・

タバコを取り出した。



「 ・・・怜。

 ・・ 何してるの?・・・」



ゴクッと息を飲んで気丈に声を出していた自分に、怜はにっと微笑んだ。


俺を見たまま、タンブラーの中のブランデーを暖炉の方にぶちまけると

バシャッと音が立つ前に・・・


________ ボ・・・


ボッと火の音が聞こえるほど、炎が大きく燃え上がった。

怜はニッと笑ったまま、暖炉に目を向けた。



・・・何って
  
________ チリ チリ チリ チリ チリ・・・



小さくボソっと聞こえた様に思ったけれど、走り寄ってきたレイの鈴の音に掻き消されていた。

足元に擦り寄ってきたレイだったけれど、足の周りを一周ぐるっとまわり、また怜の方に戻って行った時・・・



「 ・・・次期選挙の準備。 」


また、数枚の書類を手に取って燃え上がった炎の中に投げ入れた。


「 そうか・・・

  客じゃない様で、今は客のお客だな・・・」




_______ カチッ


怜がタバコに火をつけると、ふ――・・と煙を吐いた。

床の上に目を落とすと、タンブラーを持った手で傍にある灰皿を引き寄せ


「 剣も、一服 ・・・する? 」


一口吸ったタバコを差し出して、こちらの方に目を向けた。




「 いや・・・」


「 ・・・いや
 鳴良社長。付き合え・・・」



自分の言葉と怜の声が重なって、怜は同時に、シルバーのタバコケースを床に滑らせて足元に投げた。
足元のタバコケースを開けると、何も入っていなかった。


「 怜、普段タバコ吸ってたっけ? 」


いや・・・
   フ―――・・・


煙を吐きながら微かに交じる怜の返事に・・・


「 付き合うって言われても
  一本も入ってないけど・・・」


タバコケースの中を見せながら傍に寄り、そう返していたけれど・・・


新しいのある・・・


くわえタバコで返す怜は、フ―――・・・と、長く吐くとタバコを暖炉の中に投げ入れた。

傍にあった封筒をそのまま暖炉に投げ入れると、その下から開封されていないタバコの箱を取り上げた。




_____客じゃない客は・・・・      .





「 俺、愛人が居る。 」


「 知ってる・・・それに・・・
  もう一人居るんだろ? 不倫相手。 」


「 あぁ、だから今日、座敷に来なかった。 」



・・・そう。


________ カチッ


怜に差し出されたタバコに火をつけながら、返していたけれど、なんだか話がよく分からなかった。
俺がこの階に居る今・・・
どの部屋を使ってもいいと言っていたけれど、この階に居る事はを知っているのに、何故この部屋でなのかも分からなかった。

ポツリと静かに話し始めた怜のそれは、友達として聞いて欲しいのかと思っても・・・


ふ ―――・・・


「 それで・・ ちょっと待って 」

「 それで・・・・ 」


それで・・とお互いに声が重なって、何の事か分からなかったから、黙ったままタバコにもう一度口を付けた。


________ トク トク トク


グラスに赤いブランデーを注ぐ怜が、話し出した。


「 俺・・・ 子供が出来た。
  愛人との間の方に・・・ 」


立っていた俺は、床に置いてある灰皿に手を伸ばすより、暖炉の中にタバコの灰をピッと指で弾いていた。


ふ ――・・


「 それじゃぁ、若女将は・・・
  体調が優れなくて出てなかったと 」

________ シュル・・・


それに答えは無くて、怜は違う封筒を開けた。


________ バサ バサバサ・・・


「 ・・・これな。次期選挙の準備。
  親父に頼まれた、ま・・・
  秘書仕事の一つってところか 」


暖炉の前で胡坐のままの怜は、封筒を逆さにして書類を散らばしていた。


「 まぁ、好みのタイプは・・・
  親父と同じところってところか 」


ふ―――・・・

返答に無言で煙を吐くと、怜はタバコの箱を取り上げて火をつけた。


________ シャラ シャラ シャラ シャラ


怜の膝の中にいたスズの上にも書類が飛んできて、スズは起き上がり首を振っていた。
スズはぴょんと暖炉の椅子に飛び乗ると、暖炉の上に登ろうとしているのか、上を見上げていた。


________ チリ・・・


空いた怜の膝の内側に、レイがぐるっと回りながら座り、胡坐の太ももの上に顎を乗せた。


怜はブランデーの入ったグラスを持ち上げて、ゴクッと喉を鳴らして一口飲んだ。


・・・ふっ 

________ カチッ



「 あのな・・・ 
  朝、見た・・よな・・・」


一口飲んだ後、短く息を漏らしたら、タバコに手を伸ばしライターに火をつけた。

喋りながらタバコに火をつける怜は・・・

少しだけ言いだすのを、躊躇っている様にも思えた。



ふ ―――・・・・


怜が長く息を吐いて、煙を胸の底から出している様に見えて・・・



「 あれ、俺の親父の・・双子の兄。

  ・・・鐸杜家

  公家の、鐸杜家の長男だよ。 」




たくと・・・・


「 怜・・・ たく・とっ・・て・・・」


何から話していいか分からないけど と言葉を被せてくる怜。

自分からの質問よりも、全部話すから聞いていろと言われている様で、タバコを持った手でグラスを持ち、反対の手でレイの首に結ばれている、紫更紗のリボンの結び目を撫でていた。

紫更紗のリボンには・・・

俺の手についていた、鈴音の紅が少しだけ着いていた。

その紅の着いた部分を、怜は見ていた。


「 山延は知っているのか? 」


怜から視線を外したくて、バーカウンターに自分もグラスを取りに歩いて行った。


「 あぁ、殆んどってところか?
  山延は学生の頃から、
  俺も緑の事も知っているからな。 」

  

でも・・・ 

________ スゥ・・・


でも・・と言った怜に振り返ると、怜はタバコを吸っていた。


________ ポン。 トク トク トク・・・


同じ切子のタンブラーに、怜の前に置いてあるブランデーのボトルを勝手に取り、注ぎながら怜と同じ様に床に座った。


_____客じゃない客は、これからさ・・・  .


グラスに口を付けず、ボトルを持っていた手の指に挟んでいたタバコを口に銜えて、怜のグラスに手を伸ばし注いだ。


「 剣。 お前・・・  」


スズの首に付いている鈴を握り締めた怜は、俺の目に視線を合わせると、直ぐに逸らし暖炉を見つめた。



ふ ―――― ・・・・


怜は、長く煙を吐きながら

その煙を暖炉の上に向けた。



「 アイツ・・・ 鐸杜領。 
  
  あの花瓶を作った奴。 」


怜は俺の目を見詰めて、スズを撫でていた手で、傍にあったタバコの箱を俺に向けた。


「 アイツに会っただろ。 」


あぁ・・偶然・・・ そう言いながら、鐸杜と同じタバコの箱を見ていた。

山延は、アイツの事だけ、まだ知らない。アイツ、本名も顔も明かさないけど一応・・・
世界的に有名な奴だよ。と言う怜には、雑誌で作品を見た事があるとだけ伝えた。

もう一口タバコを吸った怜が



ふ―――・・・


煙を花瓶に浴びせながら、その吸殻を暖炉の中に投げ入れた。

怜の傍の灰皿は、綺麗なまま・・・

吸殻も灰すら落ちて無く、自分も見ただけで暖炉の中に灰を落とした。



_______ カチッ カチ・・ カチッ・・・


タバコの箱を持った手でライターをカチカチ点けては消し、点けては消しとしながら暖炉の中を見詰めている。

傍にある数枚の書類を取り上げると、バサッと暖炉に投げ入れた。


「 剣、この煙草・・・
  吸った事あるよな。 

  この独特の香りのヤツ。 」


「 あぁ・・ その辺で売ってないだろ。
  どこだろう、北欧で見たと思うけど・・・」


「 だろ? アイツ・・・ 」


微笑んだ怜は、素直に喜んでいる様にも見えるけれど、細めたその目は・・・

今まで俺が見た事無い、企んでいる様にも素直に喜んでいる様にも見えて、直ぐに怜は膝のスズに目を向けて撫でていた。 


「 王室からも、注文を受けて・・・
  このタバコが料金だって。 」


日本に個人的に輸入できるのは、アイツぐらいしかいなくてさ、と怜が話し出し・・・
死ぬまで送りやがれって、条件で、作品を持って行ったと・・・ 土産だって俺によこしたのが始まりで、

・・・そう話し続けていた怜を見ていた。


「 鳴海貿易経由でな、送られてくる。 
  一生分の関税は・・・
  
  ・・・東京の土地と引き換え。 」


財閥の社長だからな、俺、手続きサインぐらい・・・と、グラスに口を付け言葉を濁した怜だったけれど、ゴクッとブランデーを飲み込むと、手数料も時々一箱と交換ってとこ?と、いつもの怜らしく、笑ってグラスを床に置いた。


「 そう。アイツの・・・ 」


怜は、目を瞑ってゴクッと息を飲み込むと、タバコの箱に手を置いて、瞼を開け炎の方に目を向けた。

怜のその横顔の瞳には、燃えていく書類が写っていた。


「 俺の秘書、沙夜がこの手数料を渡してくれる。 」 
  

ちょっと、難しいから聞いてて剣。と怜が炎を見たまま言う。

俺は、それに無言で  



ふ ―――・・・


タバコの煙を吐いて、同じ様に暖炉を見詰め、吸殻を暖炉の中に投げ入れた。


「 アイツと、俺の秘書。 沙夜とは兄妹で
  でもな、父親が別の・・・
  
  双子の兄 鐸杜の方が、沙夜の父親。 」
  

怜は、タバコの箱を握り締めていた。


「 アイツ、領は・・・

  俺と・・・  」



_______ カチッ


手の中の箱から無造作に1本取ると、新しいタバコに火をつけた怜が、ふ―・・と煙を吐きながら 俺の方に差し出した。



「 なぁ、剣・・・

  アイツな、その鐸杜の弟。

  俺の父親の、愛人の子供。 
  
  俺と同じ日に生まれた・・・

  ・・・ 同じ名の、りょう。 」



_____客じゃない客も、これから・・・・   .

・・・兄弟に      .


「 令の字は、父がそっと付けたのかは、知らない。
  でも同じ響きだけは、たぶん、うっかり・・・
  俺と ・・呼び間違えない様にじゃないか? 」


そう笑っている怜だったけれど、一瞬表情を翳めた。


肖像画の鳴海代々の令が付いた人物の前に堂々と鎮座されている、燻し銀に見えるこの花瓶は錫で、鐸杜の作品だと・・・・

静かに話していて・・・



「 アイツは、俺の親父と料亭の女将の息子。

  俺達、同じ日同じ時に生まれた・・・ 

  まぁ、公家側の・・・双子ってところか。 」



フッ・・・


短く笑った怜は


「 公家の執念が、鳴海に襲い掛かって来た。

  ・・・・・な~んてな。 」



俺の顔を見て微笑みながら、グラスの残りを一気に飲んだ。


「 ・・・で、まだ続く。 」


________ トク トク トク・・・
 

それだけではない、とグラスに新しくブランデーを注ぐ怜だった。



なみなみと怜が注ぐブランデー。

ボトルを持っている怜の手首をそっと掴んで、注ぐのを止めようとした。

怜も俺も無言で視線を合わせると、俺は握った手首を軽く撫でた。


「 そんなに・・ たくさん・・・
  
  いや、その意味は・・・ 

  時間を掛けて 
  俺に話さなければならない事があるのか? 」



あぁ、だって俺・・・



怜は俺の目を見たまま、膝の中のレイを撫でると、首に結んだ紫更紗の結び目にそっと手を移した。



「 俺・・ 今まで剣とパートナーしてきて
  剣の直感には、信用度 ほぼ100%

  だから・・・

  剣が、妹と結婚したいと決心した事だけは
  
  確実に、剣の直感に触ったんだろ。  」


ニッと微笑んだ怜は・・・


「 ・・・違った? 」


瞬きをした怜は、優しい笑みに表情を緩めていた。

握った怜の手首を引き寄せて、タバコを持った腕を回し、怜の頭を俺の胸につけさせた。


「 剣・・・ 」 


俺の胸におでこを付け俯いた怜が、ぼそっとそう言ったけれど、腕を頭に回したまま怜の頭の上でタバコを吸った。

その煙を胸の中から・・・


ふ―――・・・・


大きく聞こえる様に吐き出した。


「 怜・・・ 安心して 」


タバコを持った手の甲で、怜の頭を軽く コツッと叩いた。


「 俺、ニュートラルじゃないから。 」


ぷっと笑った怜は、俺の胸を拳で叩いていた ________ . . .






あのな、剣・・・・





ゆっくり話し始めた怜の話を、抱き寄せた頭の上で聞いていた ・・・・・・





mimi's image music * Safe and Sound by William Joseph

mimi's Image music * Safe & Sound by W Joseph









お兄さま達がお2人とも直ぐにそれぞれ花を渡しただけで、帰ってしまわれた後、沙夜が現れた。



_________ カチャ・・・



「 そうそう・・・なりよしって、人。
  貴方のお兄様が連れてきたわ。 」


私達は、一緒に朝食を食べていた。

沙夜は、父が今朝釣りをしていて。と言って、お魚を持ってきてくれていた。
身重のお体に触ります。と乳母は、さっさと沙夜が持っていたバケツをメイドに運ばせていたけれど、沙夜のスタイルはまだ何も変わっていなく、沙夜自身笑っていた。

沙夜の話を聞いていて・・・


「 ビックリしちゃた。
  お母さんと同じ苗字だけど・・・」


「 うん、そうね。知っているわ。
  鳴良様、こちらに見えたから・・・」


あぁ、そうなの?と言っている沙夜の名は・・・


  “ 鳴葦 沙夜 ”


「 漢字を聞いたら、違ったからね。
  まぁ、ここの土地の人かと思ったわ。 」


彼女は、母親の経営する料亭の若女将をしている。

怜お兄さまとは、愛人関係のまま・・・


「 ねぇ、お腹の子って・・・
  お兄さまの子よね? 」


「 えぇ、もちろん、そうよ。
  それ以外、私は固い人なんだから。 」


他の人なんて、ありえない。と言うほど、沙夜は・・・ 


怜 お兄さまを愛している。


本妻の緑義姉さまより先に、身ごもってしまった沙夜。でも・・・


「 あぁ、そうそう。ごめんね。
  鈴音、あなた叔母さんになるから。 」


「 そう。じゃぁ・・・ うふふっ
  怜お兄さまも、喜んでいるのね。 」


大好きな、沙夜も怜お兄さまも、2人ともが幸せならば・・・

私にも、幸せな気分にしてくれる この方々がもっと大好きになる。



うん・・・



頷いた沙夜 さよに・・・

浮かぶ笑顔が、眩しかった。


「 そうそう、もう1人いるわ。 」


「 ふ~ん。誰? 何の事?・・・」


さよ の言っている意味も、何となく分かるようだった、その事・・・


「 あぁ、もしかして? 」


うん、そうなの・・・そう言っているのか、パクパク元気に口を動かしつつコクンと頷いた さよ を見ていた。


クスクス・・・

「 沙夜 さや の事? 」


ごくん と飲み込んだ さよ は・・・


「 中り。 」


「 そうなんだ・・・
  東京のさやも、怜お兄さまの子を。 」


鈴鳴り岬に残り、母親の料亭を受け継ぐ さよ。 彼女には、地元のお父様の事務所に勤めていた姉妹が居る。
そのもう1人は・・・


双子の 沙夜 さや 


さや もまた、怜お兄さまと、東京で不倫していると知っていた。




うふふふ・・・       
        ・・・くすくす



うふふふ・・・・


・・・・くすくす・・・




私達は __________ . . .





Myth. BLUE BELL * Back Stage an-other Night 4

mimi's image music * With in / Homeward Bound by W Joseph








「 あのな、剣・・・ 」



剣の胸におでこを付け、膝の上に座っているレイを撫でた。


自分が生まれたこの鳴海家・・・

自分が生まれた 父方の鐸杜家・・・


この二つの血が、自分の中には混じっている。

父には分からない、母からの血が騒ぐ時。
子孫を残そうとする遺伝子に、全ての受け継いでゆく財産と歴史を途絶えさせてはならないと、強くなる俺が居て・・・

母には分からない、父から後が騒ぐ時・・・

子孫を残そうとする遺伝子が、母方と少し違う方向に自分を動かす時がある _______ . . .



「 今朝、岬にいたの・・・
  親父と秘書じゃないから。 」


ふ ―― ・・・

「 それで? 」


剣は頭の上でタバコの煙を吐きながら、聞いてくれていた。



「 あれは、沙夜 さよ。

  彼女は、親父の兄と料亭の女将の娘。
  それで・・・
  
  領 、アイツが俺の親父と女将の息子だろ。  
  だから、さよとは異父兄妹でも
  岬にいたのは、アイツにとって父じゃない。

  それで、秘書のさや。 彼女は、さよと双子。

  ・・・やっぱり、似ていると勘違いした?
  双子だもんな。父親の方も娘の方も・・・

  さよとさやは、2人とも俺の愛人。  」




同じ顔に同じ声で、ここと東京といつも一緒にいてくれる・・・・


俺の

大切な2つの恋愛に、1つの心があって

1つの恋愛の様に、2つの心がある・・・   

だから・・・


剣が、双子のどちらに気持ちが向いているのか、分からない感情

自分の心の中で、とてもよく理解できると思っていた。




双子の父親。

彼らの愛人である 領と沙夜達の母、料亭の女将。


父達にもまた、幼い頃から許婚が決まっていて、結婚してから・・・ 恋に落ちた。

本妻と別れるわけにいかない父達も、妾という立場で女将に同時に恋に落ちていた。

子供を先に作ったのは、俺の父・・・ 鳴海で、領が俺と同じ瞬間に生まれた。




「 そうだな・・・
  好きになる女のタイプが、
  父親と同じだったんじゃ、ないか・・・ 」



親子ともども・・・

恋に落ちたのは、母とその娘。



領は、半分血が繋がった さよ にも さや にも、恋に落ちるはずはなかった。


「 俺と沙夜達も、鐸杜家の爺さんと繋がっているけど・・・
  
  剣、ここからよく聞け。いい?
 
  俺の本妻、緑は、鐸杜家の爺さんの双子の方が爺さんなんだ。
  俺の父方の爺さん。ここも、双子で・・・
  その双子の爺さんの弟たちも双子。それが緑の爺さんで
  その子供も双子で、緑の父は双子で双子の母と・・・
  それに沙夜の父親の本妻との子供も、双子。
  その双子達と、緑の・・・ 双子の姉。 
  その子供も双子で、どちらかが、もう許婚に成っている。 」
  


どう? ここまで、剣・・・・

  「 ・・・理解できてるか? 」
  

剣は無言で、俺の頭をぎゅっと片腕で胸に押し抱いていた。


「 鳴海の方は、母が一人娘なほど
  子に恵まれない家系でさ・・・ 

  たくさん双子の居る、鐸杜家に・・・
  母の爺さん。
  鳴海りょうの1人が、頭を下げたってわけ 」


剣は、それに・・・


「 緑さんが双子なのは、知っていたけど
  ・・・ちょっと、双子が多すぎて・・・
  まぁ、ただ・・・ なんとなく・・・  」



フッ・・・ 

「 だろ? 」


顔を見たら、もっと頭がおかしくなるからな。それに、名前もな。と付け足したのは・・・

こちらは、公家に伝わる伝統があって

同じ漢字の名を子に、名を受け継ぐ立場であると代々付けてゆく。



「 もう、墓石なんて、ホント・・
  俺でも、訳わかんないからな。 」


たぶん、俺の父はこの伝統にも、アイツに“ りょう ”と付けた一つの理由なのかもしれない。
なるみりょう 俺本人は、紛れも無い、母にとって幸いに双子ではない1人の息子だった。

剣の口調が、社長モードではない素の剣に成っていたので、剣の胸を軽く両手で押し頭を離した。

でも、自分が見ているのは・・・

床に散らばっている書類の中の一枚だった。



「 それから・・・
  なりよし。 剣、お前の名前・・・ 」


________ カサッ


一枚の書類をぎゅっと握り締めた。


「 これ、この書類な・・・ 」


手で剣に見えない様に隠していた。



「 領、アイツ・・・ 元々は、 
  
  なりよし りょう だった。 」



剣の顔を見る事は無かったけれど、剣が ふっ・・と短く吐いたタバコの煙と、吸殻を暖炉に投げたのは見えていた。

剣の吸殻が燃える場所に、この書類を投げ入れた。



「 領は、女将の苗字 なりよし。
  
  生まれた時、鳴葦 領 で・・・
  
  沙夜が生まれて、親父の兄が公家の男子にと
  
  鐸杜の名に勝手に変え、引き継がせた。

  だから、アイツ。
  ぐれた切欠も・・ 沙夜の父が嫌いなのも・・ 」 



それが・・・

剣の鳴良と、繋がりがあるかと言われたら、きっと戸籍を辿ったら・・・もしかしたら、同じ場所があるかもしれないと・・・



母が・・・


剣が来た直後。

勝手に調べさせた ただ一枚の調査書だった。



「 親父がここに来た時・・・
  なんか酔ってた朝あったろ。 」


無言の剣を無視して、床にばら撒いた書類を次々と丸めて、暖炉の中に入れ始めた。


「 あれな、俺の親友でパートナーでもある剣を
  母が調べさせ始めたと、報告を受けた父は飛んできた。
  
  だから、俺も前日の夜、送られたってか・・・
  自分で確かめたくて、早く来た。

  調査人を調査した、陰のヤツからの報告に親父、激怒して
  自分の家系を侮辱されているとさ。 思ったみたい。

  母が剣の事をよく見ていたのは、その意味もあったかも・・・」



封筒に入っているのは、剣の父が土地買収に来た頃の調査書で、手書きの昔ながらの書類は黄ばんでいた。


________ ガサ ガサ ガサ・・・


「 怜、その書類・・・ 」


床に散らばした黄ばんだ書類に、剣は・・・ 見た事無いと思っていた。

無言でそれらをかき集め、暖炉の中に全部 ぶち込んで

なみなみとグラスに注いだ、ブランデーを・・・


________ バシャ


その上にかけると、炎は・・・

一気に なりよし の経過を、燃え上がらせた。


「 まだ、調査書は、調査段階だよ。
  もう父が、手を回して止めている。 」
  

なんでか、分かるか?剣・・・

________ カチッ



タバコに火をつけて、息を吐いた。


「 俺も親父も愛人の名前 なりよし。その部分と・・
  鳴良コーポレーションは、俺と親父にとって
  高納税者で、議員後見の援助者だからだよ。 」



ふ―――・・・


タバコの煙を吐きながら、ちょっと言い方悪いけど・・・と言い始めた。


「 世界中 顔の利く、権利を持って・・・
  申し訳ない。
  悪い言葉を使うけど・・・ 」


暖炉の中に燃える、今回の新しい調査書に、20年も前の古い書類は、ブランデーの紅色に染まって
一気に強いアルコールに勢いを増した。

剣の横顔は・・・

直ぐに見る影もなく瞬時に黒くなった書類が燃える、あかに揺れていて

ただそれを見詰める剣は、唇を一瞬噛みしめて自分のグラスに手を伸ばした。


「 剣、ごめんな。 
  鳴良は・・・
       ・・いい金蔓の援助者。
  俺も親父も・・・
  剣の父親と剣自身、離したら怖いからな。 」



無言で居る剣は、暖炉の炎を見ていたけれど・・・


________ チリ チリ・・・


暖炉に飛び乗ったスズに、目を向けていた。


紅色のリボンを剣が結んだ結び目ぐらい・・・ 

俺の兄弟 領が始めた・・・ 子供の頃の、蝶の形に出来なかった癖。

鈴音も沙夜達もする事ぐらい、木箱をいつも見ている俺には分かっていた。


山延に渡したのも、領が創ったもの。


アイツの物が世界で美術館に入っても、親父には・・・

子供が図工の授業で作った様な、感覚。


その価値は、金で買えない・・・ 
                   ・・その通り ________


愛は金で買えない、心に直接 贈るものだと。


俺にもアイツの創る物には、綺麗だと思うより・・・

兄弟の想い

アイツの苦しい生き様と、反対の綺麗な心が感じられて、値段なんて価値なんて数字なんかで表せない物だと思っている。


それと同じ様に・・・


「 剣さ・・・俺。
  俺は、剣の事は、大事な親友だと思ってる。 」


心から・・・


「 心からの本音。
  俺を親友だと思ってくれているなら・・・ 」


金蔓だと言ってしまった事に、剣は激怒しているかと、無言でグラスに手を置き止まったまま炎を見ている剣を見詰めた。


________ パチッ ・・・


炎の中に燃える書類の音だけが、部屋の中に聞こえていた。


________ シャラ・・・


剣は、ブランデーの入った自分のグラスをすっと俺の前に差し出すと、その手を伸ばして俺の膝の中に居るレイを抱きあげた。

剣はレイを自分の膝の上に乗せると、首に結んだ豪華な蝶結びを解き始めていた。



「 ・・・剣 ? 」


剣は無言で、込み入った結びを解いている。


________ シュル・・・


レイの首から鈴音のリボンを抜き取ると、自分の手に巻きつけ、胸にその手を握り締め当て、目を瞑り・・・
フッと短く吐いた溜息と・・・

何を思い出しているのか、優しい笑みを浮かべていた。


 “ ・・・何か、いい思い出が好きな子と、あったのか? ”


自分が料亭の帰り、眠りそうな剣を見て考えていた笑み・・・

今浮かべている同じ笑みに、あれは鈴音との事だったのかと



   『 俺、お前の妹が好きかどうかは
        ・・・・まだ、分からないよ。 』


そう言っていた剣を思い出していた。


「 怜、あのさ・・・ 」


目を瞑ったまま喋り出した剣は、鈴音のリボンを巻いた手を握り締め、その上に手を重ねた。
俯いて両手で胸をコツッと一度叩くと、ゆっくり俺の方に目を向けた。



「 ちょっと・・・ 社長としての付き合いを
  どうぞ、よろしくお願いします。鳴海社長 」


真面目な顔の剣にとって、俺は親友ではないのだと思っていた。





mimi's image music * Se si Perde un Amore in With in by William Joseph

mimi's image music * Se si perde un Amore




月食の夜


10月の名月ではない 満月の茶会



光を失った 影が 浮かぶ 暗い空は

裏に光がある事を、教えてくれた。





パタ パタ パタ・・・

・・うふふ ________



・・・タカ タカ タカ

________ くすっ・・








_____ 鈴音お嬢さま・・ 危のうございます・・・

    お待ち下さいませ・・・

    婆々を、置いてゆかなくとも・・・





目の前で起こっていた、不思議な光景。


   ・・・幻 



 いや・・・



       重幻想 ・・・・




それが合っていると ________ . . .



ラップ音の様に、照明が一つ切れた肖像画

誰と言われたら・・・

全員知っている。



知らない 鳴海りょう が並ぶ中・・・

階段突き当たりに飾られた

代々引き継がれてきた、鳴海りょう


鳴海怜を含めた、今の・・・ 鳴海家全員の肖像画

その肖像画は、窓の無い壁際にも飾られていた肖像画 初代 鳴海令の横

銀のフレームに入った、家族写真

その家族写真は、この肖像画のモデルにしたのだと・・・

大きく写真が引き伸ばされたような、この肖像画を見ていた。




この大きな肖像画を、海の見える白亜の屋敷に飾る事が出来ないから


ここに飾られているのだろう とは・・・




_____ 鳴良さま、わたくしは そう思いますよ


鈴音の乳母。


自分の横で、あらあら、電球を変えていただかないと・・・ とメイドの方に顔を向けていた、彼女の乳母は・・・

追いかけていった、老婢・・・


茶室への道に乳母が居て・・

灯篭の灯りの様に、後ろに消えたと思っていた。

茶室に現れた、伴東を勤めた老婢が、薄暗いからか・・・
乳母だと思っていたけれど

違う人だったと・・・


______ 鳴海の者として、どこにも急ぐ必要は、ありませぬ・・・


廊下の向こうで叱る声が響いていた、元気な・・・

老婢、いや・・ 乳母と、双子のもう1人の乳母



「 申し訳ない。 気付かなくて・・・
  声が重複していたと聞こえたのも・・・」



_____ おほほ・・・ そうでございましたか

    蝶子お嬢さま 鈴音お嬢さま方も・・・
    そうそう鐸杜さまも、お伝えしておりませんでしたね

    まぁ、よろしいでございますよ。


目の前で話す乳母も、追いかけていった乳母も、それ以外のここのメイドたちも、全員がユニフォームとして同じ着物を着ていた。


_____ お分かり成らずとも、当たり前かもしれませぬので・・・


双子の乳母は袂で口元を隠し、笑いながら自分を、鈴音たちの去った方に促して行く。

それは、階段の上・・ 二階。


________ チリン・・・


階段の下で何かをつま先で蹴った音に、床を見ると
そこに小さな鈴が、落ちていた。

コロコロ・・と少し転がる鈴は、何色も色を変える光に煌いて止まった時に、手を伸ばした。


「 あの、これ・・・」


傍に居たはずの乳母は、階段の中ほどでメイドと共に

高い天井を見上げていた。


何年ぶりかに切れましたねぇ・・と、メイドと話しているのは

切れたその照明だけ、LEDライトに変わっていない、古い電球。

あれだけ、古い物でしたか。と、2人で気付いた様に見上げていた。



大きな家族の肖像画。


今の鳴海家の全員が、その中に描かれている。


森の中の写真・・・

鳴海令の肖像画の横に、復活した月光に共鳴する銀のフレームに輝いていた

目隠しをされて直ぐに見えなくされた。 




今は・・・




鳴海夫人と鳴海代議士

この夫婦の間に立っている男の子が

幼い頃の 怜だろう・・・


夫人が抱いている女児の赤ちゃんは・・・

白い 麻の葉の着物に包まれた 蝶子


そして、代議士が抱いている・・・

白い 麻の葉の着物に包まれた 双子の女児



鈴音・・・



代議士が両腕に抱える様に・・・抱いている ________ . . .










怜が暖炉で燃やしたのは、父が自分に託した あの封筒の中の物と、同じ書類も入っていた。
鳴良に関する調査報告はたった数枚のものの様だけれど、古い手書きの書類は万年筆のインクの色が変っていた。

土地所有の本当の権利が記載されている書類の方は、印刷されて

時を経ても、証明される様に・・・




「 鈴鳴り岬の土地は・・・
  誰の所有か? 朝、買収頼むと言った事
  本当なんだよな・・・鳴海社長。
  いや・・・ 隣地の所有者、鳴海殿。 」



「 ・・・あぁ。 もちろんな。
  自分の土地で、釣りをしても
  誰にも、文句を言われない奴・・・ 」



・・・だよな。

「 公家の物だとは・・・ 」


そう言い出したのには、自分の心が彼女に本当に向いているか、確かめてから話し出した事。


「 東京で、本社の窓から開発地区・・・
  鳴海建設が請負っている埠頭を見て、気付いた。 」

 
「 そう・・ あれ。
  領の一生分の、タバコ輸入の関税。 」 


「 フッ。高い、税金だよな。 」


だよな。俺も、領がアレでいいかって言った時、そんなにいらないと断ったけど・・・と言う怜は、その鐸杜がくれる手数料のタバコを吸った。


ふ ―――・・・

「 俺が知っているアイツはさ・・・ 」


怜は傍の灰皿にタバコを向けたけれど、指で暖炉の方に灰を弾いていた。


「 アイツにとっては、どうでもいいものは必要なくて
  土地の高い東京の相続税が減る方が、助かるとさ。
  自分が必要な物だけ、傍にあればいい。 って、言う奴で・・・

  
  でも・・・


そう言いかけた怜が、暖炉を見詰めて言った。

  
「 その代わり、灯台の土地は、一生きっと手放さないだろう。 」



そうか・・・

やっぱり、そうだよな 



あの土地が俺にとっても一番重要だけれど、鐸杜にとっても・・・

一番重要な、彼の居場所。


森の中で 命終わった物に、新しく魂を吹き込んで、人の一生に必要な物と変える

その彼の命を吹き込んだ物は、世界中で皇室も王室も国宝と見做すほど、讃えられる。


その物創りに必要なのは・・・

あの感性に吹いて刺激し、感性の波を穏やかに、感性の彩を変えてくれる・・・

森と岬の風景に、空気に、海に、空に、弛まなく溢れる自然



知らないどうでもいい奴が、其処に踏み入るよう

仕向けている、自分。



“ あなたさまのここが、お知りになられてますよ ”




それを壊せるかと・・・


自分の心に聞いていた。




紫色のこのリボンで目隠しされて、あの森に連れて行かれた始まり

蒼い世界にいた天女の住む場所で、瞬間的に入ってはいけないと思った自分

場所が知られては拙かったのは、俺が開拓者だからなのだろうか・・・


誰かの心を踏みにじり、居場所を奪い取り・・・

純粋な心のまま生きられる場所だと、自分でも感じた、あの場所


世界で讃えられているほどの才能を自分が殺し、世界から光を失わせても

俺は・・・

世界の人に心を与え、心を癒す・・・ そんな仕事ができる鐸杜の心まで踏み躙ろうとしている。

何気なく心をいつも、癒し続けているだろう
いつも世界のどこかで、誰かの心を癒しているだろう

世界の人々の心を、相手に出来るのか . . .




“ この・・・人々よりの心を感じ、心癒す
  恩愛への感謝と真の相を学ぶ事を、大変喜ばしく・・・ ”




由来ではなく いわれ と、自分が言葉を変えて聞いた、その返事に・・・


_____ 喜ばしく・・・


十分愛を貰って生きていると、透明で見えない心の人が、教えてくれた。
それは、自分も子供の頃から、母に教えられた・・・

自分の真心を込めて、真心を受け取って貰い、真心で心を癒す

茶の湯の精神の様でもあり・・・

母は、買収業社長の妻として、受ける心を・・・

いつかは全てを継ぐ、息子の俺に、父に気づかれる事なく、教えてくれたのだろう。


それと同じ様に・・・


自分がその場に居なくても、手にした者の心を優しくかえる・・・鐸杜

アイツが大好きな周りの人、周りの人も大好きなあの場所

それでも、自分の欲を満たし、人に自分の理想をこれ見よがしに押し付ける事・・・



窓の無い壁


窓から落ちる光すら邪魔なほど、心癒す事に集中させる様に建てられた茶室までの道

星が煌き降り落ちて、風が花の香りを運び、彩とりどりの時を想い、静寂に耳を向ける


見ず知らずの自分に、鐸杜が行けと・・・

急に押しやった電話の意味も、アイツの純粋な心は全て見えていたのかと思えていた。





「 怜・・・
  ありがとう。 」


どうしたらいいか、考えてた。と言いながら、もう一度レイの首に紫のリボンを結び始めた。

でも・・・

今度は、簡単に解く事が出来て

ここの誰もが同じ様に結ぶ事が出来る、片花の見せ掛けの蝶に結んだ。



「 俺さ・・・
  あれ・・・ 」


視線だけを暖炉の炎の中に移した。


「 今、怜が隠蔽しようとした、なりよしの記載? 
  ・・・それは、分からないけれど
  実は・・・あの、古い書類・・・  」


暖炉の中の炭と化した、真っ黒のもう形のない書類に、顎を向けた。


「 ・・・俺、持ってる。 」



________ チリ チリ チリ・・・


レイの首にリボンを巻き結び目を撫でたら、首を振って鐸杜の作った鈴の音を鳴らしていた。

怜は、俺のグラスのブランデーを一口飲み、唇をグラスに付けたままタバコの灰を暖炉の中に落としながら言った。


「 俺・・・ 愛人関係は止めないよ。
  自分の心が素直に成れる居場所だし。 」


だから、安心して。と、微笑んでもう一口飲んだ。


俺には・・・
別に隠すような血族があるわけじゃない。けれど・・・

怜は、たった一枚の調査書を見て、どう思ったのだろう。

次期総理大臣になるかもしれない代議士が調査を止めさせたそれは・・・
なにか代議士にとって不都合かつ もしかしたら恐れる繋がりがあるのかどうか。隠蔽する様な なりよし の由来でもあったのかは・・・

愛人関係は止めないと言い切ってくれた怜。これと言ってたいした事ではなかったと、俺に言いたいのだろう。
それと・・・


「 本当の現状まで捨てるつもりは、さらさらない。
  ただ、選挙の裏作りの為に、クリーンに見せるだけ。

  俺も親父も何が怖いかって・・・
  世間の目か?  いや・・・    口か・・ 」


どうでもいい、人のプライベートに興味だけで口突っ込まれて、マスコミに翻弄される世間。

俺にとっても、それが怖い事だと・・・

信用を自分で創っても人に壊される、なんでそんな事をされなくてはならないのかと
ただ単に妬みや嫉みで書かれて、自分の人生を壊されるのだけは、納得できない。

それが、別に本妻以外に女がいようとも二股三股している奴なんて、世の中にワンサカといる。
それが、血族とか財産とか色々な事が重なる怜には、心から愛している人を金目当ての女と呼ばれ足りしたら、許しがたいのだろう。

財産が絡んでいる、血族・・・・
  
俺にはまだ分からない、見えない彼らの感情の内。



「 人間関係の中に、土地の奪い合いが分かるような物、
  傲慢な妻の言いなりみたいなのと・・・

  母の、鳴海からの財産は、1人娘の母だけ。 

  父の方は、親類縁者が普通より2倍ずつだろ。
  だから、個人個人の財産は母の方が莫大でも・・・
  どうしてか・・・ 

  ・・・その欲は、止め処なく

  そんな欲の塊が、操っているんじゃないか?とか・・・
  後の天下り先も、俺の会社。
  まぁ、名前だけを社長就任させるだけの上辺で、
  実際は、鳴海の血を引く、俺が動かす。 でも・・・

  その上辺だけのために、夫婦円満を装うってとこ、かな 」



怜のその言葉を聞いて、俺はレイを撫でていた。

実体の見えない時・・・ 恐怖に震え
実体の見える今は・・・  
            なぁんだ  ・・って、思えること ______



それが、正しいかは・・・・



「 山延が鳴海家に入ろうとしたのは、
  財産を動かせる、血縁の為だと・・・ 」


「 そうだよ。 俺と意見が合うのは昔から。
  結婚と恋愛が別だとは・・・ 学生時代
  俺の結婚当初から、山延は見てるからな。 」


なぁ、剣・・・


________ カチッ


指に吸いかけのタバコを挟んだまま、咥えた新しいタバコに火をつけて、俺の方に差し出した。


「 結婚って、俺達にとって
  好きがどうかなんて関係なくてさ・・・
 
  人生を、自分の理想通り・・・
  お前も言っていた・・・  理想郷。

  男って、自分の理想郷に身を置く事、求めてないか? 」


怜が差し出したタバコを受け取り、手を口に持っていったまま考えた。
まぁそれに、恋愛が伴えば一番いいかと思うけどな。おい、レン。と言いながら、タバコを差し出した手で俺の胸を軽く叩いた怜は・・・


「 双子のどちらでも・・・どうぞ。 」


交渉させる時の冷たい笑顔を浮かべていた。


「 お前とのプロジェクト。
  剣の会社のプロジェクトの為に、
  血族の結束が一番だって重要視した山延の気持ち

  俺、親友がそう言ってくれた時

  人生 後々 好きな事に自分を埋める方が
  幸せだと・・・  
  俺・・・   
  いや・・・  ・・俺達は、思うけどな。

  それから、鳴海の家系に、離婚は絶対無い。
  父と母の様に、別居は・・・ 可能な事。 」




それが、正しいかは・・・



  “ あなたさまのここが、お知りになられていますよ・・・ ”



・・・ 自分の心が知っているのだろう ___________








怜・・・

結婚は、俺・・・

好きな子とも

好きな事も 

両方できる

・・ただ ・・・・








ただ・・・?

・・何か まだ問題ある?








後ろの正面が誰だったのか








なにそれ・・・








そうか と こううん

かすみ の にし









剣・・・ ?









・・なんでもない







ふ ―――― ・・・・







































霞のにし




















結婚は、すきなこと



好きな子と

好きな事




自分の中で今は同じだけの大きさ

理想を追いかけたいのなら、何が必要なのか・・・




心が愛かどうか分からないから、愛が必要なのかすら分からない



だから・・・



何が必要なのかと、考える事自体・・・  

         ・・・必要じゃないのかもしれない _________________ 









心が知っている事は























To .... Last Act  ∽ 3.3











☆ こちらの作品は、2015/04/09 にUPしましたが、作品を一箇所に纏める為に日付をずらしました ☆






CM: --
TB: --
mimi's world from Ren Tsuruga and Chuehonn Hizuri
Love Letter from RT and CH

▲Page top