mimi's world * HOPE and DESIRE

_______ BE-lie-VE * be-LIE ve * believe...the SHAMs for heart healing * mimi's world-7 _______

Myth. BLUE BELL - Act.2 

.



________ コン・コン・・・・



「 はい・・・」





昨晩から来ている此処 . . . . .


・・・鈴鳴り岬の土地



病に倒れた親友、学生の頃から付き合いのある山延の言付けを伝える為に訪れている。


けれど、本当の目的は ____________






Myth. BLUE BELL  

- 鈴鳴り岬の向こう -


Act. 2
Scene
 鳴海家


 追憶 


sky in coffee / Scean 1©


Cast


鳴良 剣  敦賀蓮

鳴海 蝶子  松内瑠璃子




mimi's Image music * Bella's Lullaby - TWILIGHT -


 

      


________ ギィ・・・―――――





ドアを開けるとそこには、頭を深々と下げた1人の女中が立っていた。


「 おはようございます。 夕べは旅のお疲れを癒されましたでしょうか・・・」


丁寧な女中の言葉に、はい。と返事をしただけで、目の前のその女中は下げた頭を上げると部屋に入る事も無く、どうぞこちらへ・・・と手を向けた。その指された方を見ると・・・

長い廊下には幾つも並んだ同じ様なドア。

手を差し出された先には、1つだけドアが開け放たれていて、その開いたドアに数人の女中が出たり入ったりしていた。

迎えに来てくれた女中の後を付いて行くと、その開け放たれていた1つのドアの向こうに通された。




「 こちらで、少々お待ちくださいませ。 」


案内をしてくれた女中は下がり、傍から違うメイドが朝食の準備が整ったテーブルに、コーヒーを置いていった。
その女中も下がる時には、開け放たれていたままだったドアが閉められ、この部屋にはたった一人になった。


テーブルに置かれた湯気の立ったコーヒー。

綺麗にセットアップされたテーブルの上には、それ以外はまだ何も用意されていない。

入ってきた瞬間に感じた何かの違和感をこの部屋に感じ、ぐるっと天井の方まで部屋全体を見回していた。


・・・別に、これと言って・・・


こちらへ・・・と誘われ通されたこの部屋は、昨晩の豪華な晩餐とも呼べるメインダイニングの部屋ではなかった。
古くから華族として代々受け継いできた調度品の数々に、この屋敷と広大な近辺の土地。

暖炉の上には燻し銀の大きなアールデコ調の花瓶に、何10本ものバラをメインにアレンジメントが綺麗にされている。

これだけたくさんの花が、この部屋に飾られているにもかかわらず、何かの匂いに不気味さを感じもしていた。


幕末から時代が変わる時、鎖国を解き海外から入ってきたのであろう、その時代から伝わるような銀細工の置物や銀額縁の絵画などが ところ狭しと並べられている。
綺麗に掃除が行き届き、銀の調度品はピカピカに磨かれていた。



大して客人が来ないのではないか・・・


そう思ったのは、綺麗に掃除が行き届いているものの、此処この部屋はそのたいして来ない客人の為の居間なのだろう。人が使ったと云う痕跡が無いと感じたのは、古めかしい館 独特の動かなかった空気が濃厚に立ち込めている香り。

たくさんの花が生けられているのにも、何かこの匂いを誤魔化そうとしているのか?

そう思いながら、花瓶の後ろに掛けられた、大きな肖像画を見ていた。
ピカピカに磨かれた銀の額縁に入れられた大きな壁掛けの肖像画。
写真の様に精密に描かれた画風ではあるが、時を感じる程に色あせて変色しかけている。

ピカピカの銀のフレームに写った自分の顔を見ると、その手前の燻し銀の大きな花瓶に豪華に生けられたバラのアレンジメントに胸騒ぎが少しだけ治まりかけていると感じ、そのフレームに納められている肖像画の人物にはさほど気を取られる事は無かった。

暖炉の上を端から端まで手で撫でながら暖炉の上に置かれた花を見ていた。

洋館ならではの雰囲気にとてもよく似合う。
・・・そう思いながらテーブルに置かれたコーヒーに手を伸ばした。



_____ ふぅ-・・・



湯気の立つカップを持ち上げ息を吹きかけて、一口付けると、窓の外に広がる景色を見ていた。

天井の高いこの屋敷には、天井近くまで大きく取られた窓が並び、明るい朝日をたくさん入れて部屋全体がとても明るい。
窓の外に広がる景色を見ながら、カップを持ったまま窓の傍に近寄った。

この部屋の窓からも、この屋敷以外周りに建物らしき建物が無いほど、広大に広がったこの鳴海家の敷地が見渡せた。

自分が泊めていただいている部屋とは全く反対の方角の景色には、海を遠くに見る事が出来る。

鈴鳴り岬という名の通り、岬には・・・・・




________ ちり・ちり・・ちり・・



「 ふぅ・・・またか。 」



耳鳴りの様に聴こえる、小さな鈴の音。

顔を海から背け溜息をついたと同時に、耳たぶを揉みながら首を軽く横に振っていた。
横に振った視界の中に、ふと目が誰かと一瞬だけ合ったような気がして、窓の外を見た。



________ ちりちり・ちりちりちり


石造りの幅の広い手すりの上に一匹の猫が座り、自分と同じ様に顔を横に振っていた。
また、猫の鈴だったのか・・・・そう思い、両開きの大きな窓のノブに手を伸ばす。


「 なんだ・・お前、誰か開けてくれるのを待っていたのか? 」


窓を開けて、おいで・・・と促した。カップをテーブルに置き直し振り返ると、その猫はまだバルコニーの手すりの上にうずくまっている。


「 なんだ、来ないのか? 」


フワフワの真っ白い猫に手を伸ばすと、抱き上げても嫌がらない。

頭を撫でながら部屋の中に入れ、窓を閉めようと手を伸ばしたら、自分の腕の中からするっとその猫は抜けて飛び降りた。


風の運んできた潮の香りに清々しさを感じて、古めかしい館独特の匂いに少しだけ気分が開放される。

開けた窓の窓の前で、両腕をいっぱいに上に伸ばし大きく深呼吸をして、海の爽やかな空気を胸いっぱいに吸い込んだ。


________ ちり・ちり・ちりん・ちり・ちり・・・


窓を閉めて鈴の音のする方に目を移すと、猫が暖炉の上に飛び移ろうと傍に置いてある椅子の上に座っている。


( ん・・・? )

そう思ったのは他でもない。

今さっき自分が抱き上げるまでは、手入れの行き届いた真っ白の猫・・・だったはずなのに・・・




・・・自分が撫でた時に付いたのだろうか?




真っ白だったはずの猫の頭は、薄黒く成っている。



( ・・・暖炉? )

猫の頭を撫でる前、確かに暖炉の上を触っていた。自分の手を見ると、やっぱり すすが付いて薄く汚れていた。

自分の手を見詰め、指先を擦り合わせながら考えていた。




何故・・・
・・・この時期に・・・?



もう夏が終わりかけている。

それに・・・


この部屋に来客があった気配も無い。


もし来客があったとしても、暖炉を使う時期と言われたら随分時間が経ち、時期はずれだった。
その間、ここの余っている程たくさん居るメイドが、掃除を怠るはずは無さそうだと思っていた。

白陶磁のコーヒーカップには、すすが付いていないのを見ると、やはり・・・

自分が暖炉の上を撫でた時に付いた片手だけ。


窓の取っ手を見に寄りながら ふと猫の方を見た。

白い猫はもう、暖炉の上に飛び移っていた。
その猫は首に付けられた鈴の音を小さく響かせながら、燻し銀の花瓶に擦り寄っている。


窓の方から少し放れて部屋全体を見回すと・・・・

違和感は、その大きな燻し銀の花瓶にだけ、どうしても感じてしまう。

部屋全体に銀の調度品で統一されている中で、たった一つだけ・・・
その花瓶だけが燻し銀で、その他のものは皆、ピカピカに磨かれ抜かれていた。

銀は手入れを少しでも怠ると変色して黒ずんだ錆が浮き上がってくる事は知っているし、それに人が触ろうものならその手の脂で、その部分だけ形に成って浮き上がる様に、変色の時に特別に色が変わる。


ここには・・・

磨かれている物は全てそんな形跡が無いほど掃除が行き届いている。

でも、燻し銀の花瓶をじっくり見ても、人が触った様な痕跡も無いのは確か。
まぁ、銀の年代とかいろいろあるんだろうな。そう思いながら、閉めた窓の外に目を向けたのは気に成る事がどうしてもあったからだった。


あの・・・海の岬・・・・


高台の岬の縁に、大きな灯台が建っている。

それを見詰めながら、コーヒーをまた一口飲み思い返していた・・・・





それは昨晩の事 ____________ . . . . .




Scean 2 - hill constellation galaxie©





「 暑っつ・・・」



通された部屋は、どう見ても客人しか使わない、大きな館の3階だった。
綺麗に掃除が行き届いているものの、普段はメイド以外誰もこの階には寄り付かないのだろう、長い間動かない空気が溜まっている様に感じていた。

部屋が広すぎるのか、それとも古いのか、
それは分からないけれど、クーラーが点いているにも拘らず全く利いていないような感じ。

山延に電話を掛けようと携帯を手に取り、窓を開けながら山延に電話を掛けた。
時間的には病院の就寝時間は過ぎていたので、留守電に残すつもりで電話を掛けていた。

蝶子さんの事や、ここの屋敷に一応泊まる事に成った旨を伝えておかなければ、後でこの・・・
“ 蝶子さんにベタ惚れの親友 ”から何か勘違いして言われては困ると思いながらの事だった。

留守電に残しながら窓を開けると、海辺独特の風の強さ。

一気に部屋中の掠れた空気に入り混じり、風が運んできた潮の香りと清々しい緑の空気に、自分の顔が穏やかになるのを感じていた。


電話を切ってそのまま外の風に当たり、遠くにも近くにも何も見えない程、暗闇に包まれている事が分かる。
他に何処にもホテルが無い事は・・・

・・・実は知っていた事だった。



はぁ ・・―― 


溜息を1つだけ付いて、知っている事を思い出していた。

・・・その時だった・・・___________



この暗闇の中に1つだけチカチカしている光が遠くにある。

( ん?なんだろ・・・?)

じーっと目を凝らして見ても、何も他には見えるものは無い。
この屋敷の庭に植木がライトアップされて浮かんで見えるもの以外、屋敷の庭より先は暗闇、それにその闇夜の上空には・・・空いっぱいに広がる、都会では見る事の出来ない満天の銀河の星空だけだった。

遠くを見ていたその時に、所々ぼんやりとライトアップされた植木の陰から、ひゅっと掠めて消えたもの・・・



Scean 3 - Enhanced tree©



植木の間の暗闇に目を凝らしても見えるものは無い。


ただ今・・・目を掠めた物が、長い黒髪に真紅のリボンの様な気がしていた。
闇の中に黒は見えなかったけれど、ぼんやり浮かぶ植木の緑と・・・


・・・その紅。



目の中に掠めた色は、自然の色では無いと思っていた。







そして・・・・





そのまま見詰めていても、潮風の香りに変わりは無く

その潮風が自分の前髪を強く揺らし目に掛かった時、一瞬だけ目を瞑り髪をかき上げた時

屋敷の外の暗闇に、小さなライトが揺れながら点いていた。


その小さなライトは人が歩いている様な揺れ。
懐中電灯やランタンの様な、人が暗闇を歩く先を照らす物の様だと気付いた。
その人影だろう。小さな持ち歩きのライトが隠れる様に消えたり、また陰る物無く無く現れて点いたりしながら、ずっとずっと先・・・

ずっとずっと先のチカチカ点滅している光に向かって歩いていると思った。




Scean 4 - Stairway ©






翌朝のさっき・・・

まだ夜も明けない内、薄く明るく空が色付き始めた頃の日の出にこそ まだ時間があったけれど、ライト無しで散策に行ける明るさに目が覚めた。

薄明るくなった窓からの光が、大きな階段を照らし・・・そっと、降りて行った。

メイド達も寝ているのか・・・


広い屋敷の中は音を立てても聞こえないのだろうけれど、シン・・と静まり返っていた。



大きな門を通り抜けてその先に広がる平野。

所々に生えている自然の野が造った光景の中、ひんやりとした空気に包まれて、朝露の輝きだす前の時間。

スゥーっと大きく息を深呼吸しながら、古い館の空気を胸の中から追い出していた。

一本の木の根元を通り過がる時、風に揺れ動く木の葉からの朝露を頬に浴びて
手の平を差し伸べて上を見上げると、青く色付き始めようという空の色に、上のほうの朝露が輝きだしていて・・・
まだ空に残る数個の星と共にきらきら輝きながら、海風に揺れる朝露は自分の元に降り注いできた。

海の潮の香りに緑の清々しい透き通った空気の中で・・・



・・もし・・・・
ここに来ていたとしたら・・・



・・・と・・・

なぜか・・・


懐かしいと記憶している心。



でもこの場所に見覚えは無い。

もし自分がここに来ることがあったのだとしたら、父がこの辺りの土地を手放す前の事。

それを考えながら自分の起きた時に見た窓からの光景を思い出しながら、歩き始めた。



_____ 父がこの辺りの土地を手放したと聞いたのも、自分は大きくなってからの事だった。

もし自分がここに連れて来られた事があったのだとしたら、自分は生まれたばかりの頃だろう。


そんな昔の事・・・


父はこの辺りの土地開発に携わっていたものの、結局その開発事業の話も無くなった。
この辺りの古くから土地を所有しているのは、豪農や華族であった。皆、先代から何百年と受け継いできた土地を手放す気は皆無であり売却には無関心だった。
総合企業の買収には一切いい顔を見せず、開発事業の会長で理事長を務めていた自分の父。
会長が自ら出向き、いくら頭を下げて回っても、頷くどころかポッと出の成金の様に扱われたのも、父の事業が傲慢だった事もあったのだろう。
豪農や華族以外の土地を無差別に買い漁り、既に開発を進めていたやり方は自分も今になって思えば、好きでは無かった。
土地を手放す気が無い、古くからの人々にも・・・

金でけりをつけるだけのやり方で、彼らの時代と云う歴史を背負った血族ならではの重要なものを無視し、新しい時代を押し付けようとした傲慢なやり方の企業は、誇りと伝統を受け継いできた人々には全く意味が無いと無差別に買い漁る事を断念した。

自分は・・・

それぐらいしか知らない。この土地の事。


あの時の父が受けた屈辱を、ここの鳴海夫人は覚えているのだろうか・・・

自分の名前がそうである事に、息子だと気付いていたのだろうか・・・

それとも、初対面の挨拶をした自分に、夫人は父の面影を自分の顔に重ね、名を名乗った事で気が付いているのだろうか・・・

咄嗟に色々な事が頭の中を回り、夫人が下がる時は頭を下げたまま・・・顔を上げる事が出来なかった自分。


趣と伝統に、由緒に、血族の歴史に・・・

それらは、自分にはわからない感覚で、血を引く者のみが知っているもの。
生まれながらに持ち合わせる誇りとそれに携わって育てられてきた者達から見たら、自分の父が自ら築いた功績など、歴史の浅い何処の者とも判らない馬鹿げた者なのだろう。

自分の通された客室からは・・・良く見渡す事が出来た、父の残したまま放置された建造物がトマソンと成ってまだあった。

その部屋に留泊する様にと通された事は、この事を知っていて態となのだろうか。

それとも、ただ・・・
この屋敷に迎え入れられたと云う証拠に、いい部屋に通されただけなのだろうか・・・


一番いい客室からの眺めの中に、父が残したまま廃墟と化した、朽ち果てて時を感じる建造物が美しい景観を邪魔しているとは・・・

・・・自分の心が痛く成った。


父がしようとしていた事は、土地開発の一環として、ホテルやレジャー施設、はたまた交通の便を考えて、道路や橋に電車に・・・様々な総合企業を取り締まっていた事。

ホテルがこの辺りに無い事は、父が成し遂げられなかった事で知っていた。 _______





Scean 5 - window from Guest Living©


mimi's Image music * Laura's Theme By Salzberg C




________ ちり・ちり・・・


コーヒーが冷め始めている事に、取り上げたカップに口を付けて感じていた。
鈴の音は暖炉の上で花瓶に擦り寄っていた猫が暖炉から飛び降りたもので、この客用の居間からの自分の泊まっている部屋からは見えなかった景色の中に、気付いた事があった。


あの海の岬・・・

高台の岬に建つ灯台。
離れているけれど、その岬の先にも・・・森が広がっている。

後で、あの森まで行ってみよう。


・・・ここに来た目的は、親友の為だけではなかった。

そちら側の森は、黄緑色の葉の色が深い緑の中に入り混じっている。

種類の違う樹が伸びているのか・・・


昨日のチカチカ遠くに光っていた小さな光は、自分の部屋と反対側のこの灯台の光が、父が残したままの何十年も放置されたままの鉄骨の骨組み、それに灯台の光が当たり反射していたのだと気が付いた。

でも、気付いたのはそれだけでは無い・・・


自分が散歩に出掛けた正面の門ではない、メイドや配達の者たちが使うのであろう、普通の家に比べたら比べ物にならないほど立派な門だけど・・・


その裏門の先


人が出入りする為だけの小さな通用門がある事に気が付いた。
隠れるように茂みに覆われているのは、ここの家主から使用人の出入りが見えない様にされている為なのかと思えた。


昨日の真紅のリボンだろう
植木のぼんやりと浮き上がったライトの中に見えて、庭の中に消えて行った筈のその紅色。

しばらくして懐中電灯の様な光が、廃墟の方に向かっていたと云う事は、この裏門から出て行ったのだと思っていた。
この館の真ん中に位置された客用の居間からでは見えない角度にあるけれど、自分が泊めて頂いている角部屋からなら・・・

この森とあの森が繋がっているかどうかも、見ることが出来るかもしれないと思い始めた。



________ ちり・ちり・ちり・・ちり・・り・・り・・・・り・・


少しずつ小さく遠ざかる様な鈴の音に・・・


部屋の方に振り返り 窓から離れてテーブルに行きながら、部屋の中を歩き回りドアの方に向かう猫を見ていた。

カリカリ・カリカリカリ

真っ白のその猫はドアを開けろと言っているのか、メイドが出て行った方のドアに向かって爪を立てていた。


にゃぉ・・・

________ ガチャッ



「 おはようございます。 」

猫が鳴いた声と共にドアは開き、女中に開けられたそのドアから入って来たのは、蝶子だけだった。


「 朝、家族の者たちと同じ食卓では、気が引けると思いましたので。 」


蝶子はそう言いながら、側に仕える女中が下がると、彼女の側近のメイドが引いた椅子に座った。
彼女が着ている着物は昨日と同じものでは無い。

金糸の刺繍が施された高価な振袖。

こんな高価な振袖を普段着として着ているのだろう。
そう思ったのは、父がどうしても欲しかったこの鳴海家の広大な土地を管理するだけでも大変な必要経費を、いとも簡単に捻り出せる程の財産がある事を知っているからだった。

目の前に座った彼女が食卓の上からナフキンを取り上げると、メイドは彼女にも自分にもコーヒーを入れてくれる。その側から違うメイドが、凝った物が少しずつ乗せられたプレートを目の前に出してくれた。

自分の前にも置かれているナフキンを膝に広げると、振り袖を着ている蝶子は着物の前合わせにナフキンの角を掛けていた。



「 茶道を嗜まれるのですか? 」


そう聞いたのは他でも無い。ナフキンを着物の合わせに掛ける時に懐紙と古袱紗が、その懐に挿されていたからだった。


「 はい。そうです。 」


そう答えた蝶子は、フォークとナイフを取り上げると言葉を続けた。


「 お天気が落ち着きましたら、秋の名月日和の時にでも、
  夜噺の野点をと母が申しておりますもので、ただ今はお稽古に勤しんでおります。 」


「 そうですね。荒れた海の波が静まる頃には、綺麗な月が堪能出来ます事を祈りますよ。
  その頃には山延も・・・良く成っているといいのですが・・・ 」


親友のベタ惚れの子である。
親友が許婚と自分に言うほど、彼はこの子にすっかり魅了されている。
この子にはその気が無い・・と聞いた事は、親友に言うわけに言わなかった。

山延の事を口に出したら途端に俯き、フォークとナイフをむやみに動かしている様を落ち着いて見ていた。
でも親友の為にも聞いてみたいと思った事を口に出そうと、自分は一口 口に運んだだけでフォークを皿に掛けた。


「 蝶子さんには、恋人でも? 」


ん?という顔をして自分の事を見詰めた後に、にこっと微笑んだ彼女。


「 いえ。その様な間柄の者はいません。 」


キッパリと言い切った彼女を見ながら、コーヒーに自分は手を伸ばしていた。彼女が続けたのは・・・


「 山延さまには申し訳ありませんが・・・
  私・・・男性とのそういったご関係は・・・」


そう言っているにも関わらず、自分を微笑みながら見詰めたまま、コーヒーに伸ばしていた自分の手をそっと上から包んだのは・・・

・・・一体なんなんだ。


ほとほと親友が、何故この子を好きに成ったのか、分からなく成る。
自分に色目を使ってくる女性は数多くいるけれど、皆誰もが、自分の容姿とそれに企業の会長を務める家庭の息子で、ご子息様などと思われ言われている。
そんな理由で自分の心の中なんぞ全く無視し、自分の中身なんか全く分かっていない者ばかりに嫌気がさしてくる。

それにこの子は、自分の親友が許婚だと思っていると知っているはずだ。


自分の手の上に置かれた彼女の手を女性に対するマナーで振り払う事はできないままで居たけれど、反対の手でやんわりと彼女の手を持ち上げてコーヒーをソーサーごと手前に引き寄せた。

今、彼女の手を持ち上げた時、思い出す。

持ち上げた方の手を見詰めながら、ナフキンに指を擦り合わせていた。

白いナフキンには、まだ薄く自分の手に残った黒いすすが付いていたけれど、持ち上げた彼女の手に すすが付く事はなかった。


バラの生けられた大きな燻し銀の花瓶に目をやりながら、コーヒーを飲んだ。

( バラね・・・)

そう思うのは友人の例えた彼女。確かに華やかで豪華な花瓶にたくさんの花が生けられていても、その中でも主役と呼べるほどバラはいつも目立つものだと思いながらだった。でも彼女は・・・


「 あちらの豪華なアレンジメント。すごく素敵ですね。
  この部屋の調度品にすごく馴染んでいるのに、存在感が溢れている。 」


ふふっ。そうですか。と、微笑み直した彼女は自分に伸ばしていた手で、フォークを取り上げた。
自分は話を変えた訳ではなかったけれど、少し彼女を試して見たいと思い始めていた。


「 蝶子さんは、茶道の他には・・・華道はされますか? 」


ええ。そうですね・・・そう言いながらではあったけれど、彼女が言ったのは・・・


「 私・・・生け花や茶花の様に、野に咲く花を季節に合わせて挿すものよりも・・・
  
 ・・・実は、あんな風な・・・」



彼女は花瓶の方に指を指して言いかけ始めた。


「 古風なものよりもあんな感じのですね、豪華なアレンジメントの方が好きなんです。
  それに季節の花ではなく、自分の気分に合わせて部屋を飾れる方が、
  ・・・いいかなと思います。 」

「 ふふっ。気分ね。確かにそうかも。 」


テーブルにコーヒーカップを置くと、自分のコーヒーカップを覗きこむ彼女。
お代わりをお持ちして。と側にいるメイドに話しかけてくれるところも、しっかりしていると思えた。


「 あのアレンジメントは、蝶子さんが生けられたのですか? 」

「 いえいえ、違います。 」

「 では、どなたが? 」


その質問には、ん~~っと考えているけれど、この客室の階に彼女が来る事は普段は無いのであろう。


「 たぶん、メイドか出入りの花屋か・・・
  お知りに成たいですか? ただ今メイドに聞きますけれど・・・」


いや。大丈夫。と微笑みながら手を振った。それを聞いても、別に試しているのはこの子 蝶子。
彼女が嘘を付いている様ではないと云う様子が判ればいいだけだった。




_____ . . . . .  「 ねぇ・・・ 」


小声で呼びかけたのは他でも無い。
コーヒーを取りに行ったままの彼女のメイドは まだ戻ってこないし、その他にいるメイドも彼女には近寄る事が許されていないのだろうか。遠巻きに見て次のお皿を運ぶ準備に気をとられていた。

テーブルに両肘を付いて身を乗り出すと、今まで行儀良くしていた彼女も、何なに?と小声で身を乗り出して顔を近づけてきた。

辺りをきょろきょろ見回してから・・・

にこっと微笑むと、にこっと返す。にーっと笑うと、にーっと笑って返してくれる。



「 ねぇ、後でね・・・

・・・あの岬・・・ 」



窓の外に視線を向け、続けて聞いてみた。



「 あの岬にね、行ってみようと思うんだけど・・・

・・・夏でも、この辺りは冷えるのかな? 」



ん?いいえ~、冷えないですよ。と言って岬に関しての事にも別に何も知らない様だと思えた。


きょろきょろ見回した時に・・・

猫がいつの間にか部屋から消えていたと思っていた。



あの・・・
真っ白に輝くフワフワの猫の毛。





その背中にも・・・





すすが付いて薄汚れていた。



燻し銀の花瓶に擦り寄った時に付いたものだろうとは・・・直ぐに判った。

手の中に握っていた白いナフキンをテーブルに置き、自分の手を見詰めていた。
もう すすは付いていない。
それには最近暖炉に火を入れた証拠である様に、新しい すすであると思えていた。


もう一度花瓶を見ると・・・


猫が擦り寄っていた部分だけ、違う輝きを窓から差し込んだ朝日の光に浮かび上がらせていた。


「 それじゃぁ、暖炉に火を入れるとかって・・・」

「 えっ!この季節に? ・・して欲しいですか? 
  それなら じゃぁ、ただ今メイドを・・・」


自分の暖炉の方への視線に気付いたのだろうか。メイドを呼びそうになり、自分と寄せていた顔を離した彼女。
うんん。そう言う訳じゃないよ。と言いながら自分も顔をテーブルから離すと、違うカップに淹れたてのコーヒーを持ってきたメイドが、近づいてきていた。


「 ね。振袖だし、暑いよね。 」


そう言いながら微笑んだら、ほんと、そう。と一言だけ返してフォークを手に取った。
側近がいるからか、しおらしく食べ始めたけれど、ちょっと下がってて。と自分のメイドに言い渡している。それが・・・
自分に気を許したと見えたのと、彼女が本当の事を言う時の顔の表情を確かめられた。

にこにこしながら、パクパク食べ始めた目の前の彼女の黒髪には、今日の赤い振袖に合わせて昨日と同じ真紅のリボンが結ばれていた。



でも、この・・・

懐中している古袱紗と、真紅のリボン。



これだけの豪華で外車が買えそうな高価な振袖を着ているのに、昨日と同じリボンに違和感を感じたのは、お金を掛けるだけ掛ける贅沢な家庭なら髪飾りなどいくらでもあるだろうと思うことと・・・

懐に挟んだ古袱紗の切れ地がこの子が着ている着物には似合わないと云う事・・・・・


古袱紗は、質素な端切れの様に思えたからだった。

先代から受け継いだと云う様な、時代を感じる古いものでは無い。

古袱紗なんて茶道を嗜む者ならば、いくらでも着物に合わせて持っているだろと思えることにも、違和感を感じていた。


( じゃぁ、本題だな。 )

彼女の側近が側から離れたのを見計らい、でも離れたところから見守る この家のメイド達には聞こえない様に話しかけた。

猫の鈴の音が遠ざかる様に小さく成ったこの部屋の距離感を、思い出して・・・・・



「 ねぇ、蝶子さん。 」

「 ん?なんですか? 」


小首をかしげながらも微笑んでいる彼女に、自分も屈託なく微笑みかけた。


「 昨日の夜・・・どこか出かけた? 逢引? 」


男の人とは関係を持った事は無いと言ったけれど、自分に対する態度が男嫌いでは無い事は判っている。

昨日の夜、皆が寝静まってから・・・

さっき見つけた裏の通用口の方に向かって行ったのだと、植木の灯りに掠めた真紅のリボンが、彼女が恋人の元に隠れて行ったのかと思っていた。


「 いえ・・・」


そう言ったまま口ごもった彼女は、嘘を付いている様では無いけれど・・・
何かを隠していると思えるには、十分だった。


「 ・・・岬の方? 」


何処にも行っていないと答えたけれど、自分は勝手に言葉を続けた。
黙ったままの彼女に、行った事を想定して言葉を続けてみたのは、ただ・・・岬ではないと思ったからだった。

それに自分が見たのは反対の方・・・

この景色の裏側に当たる、自分の泊めてもらっている森の方角に、手持ちのライトが吸い込まれるように消えて行ったから。


「 あっち・・・廃墟のある森の方? 」


この居間からは見えない景色に、えっ!と顔を強張らせ手への意識が緩み・・・・・




________ カシャーン・・・・・チャリ・・チャ・・リ・・

________ ・・チリン、チリー・・ン・・・・・



持っていたフォークを彼女が落とした。




でもその時に・・・




一瞬聞こえた鈴の音色。


きょろきょろと見回すと、猫はこの部屋に居ない・・・

ピカピカの銀のフォークが転がる音と、鈴の音が・・・似ているかといわれたら・・・何も言い返せない。
それには・・・・・
猫の鈴の音が、耳鳴りの様に耳に残ったままだったのだろうかと思っていると・・・・・


・・・・蝶子は、強張らせていた顔のまま自分を見詰めて言い出した。





「 あの岬には・・・近づくなと、お父様に言われています。 」




岬の事には無反応だったのに、海側では無い方の森の話をしても返したのは・・・








・・・ 岬の方 _____________ . . . . .








Act 2 - Flame of fireplace 2©







一体 ・・・・




何を考えて _________________________. . . . .






Act2 - Cat and Fireplace ©






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........................ Act 3 へ・・・

どうぞ行ってらっしゃいませ



Myth.BLUE BELL aCT 3 To Fly Away
to Fly Away by Moka



Act 2予告、tweet from Ren その通り・・・
彼が撮影した6つのシーンの内、どれかの撮影中の話が、その写真をクリックすると現れます。

どうぞ、探してみてください ____________________




PS Mokaさん、続きどうぞよろしくね~~~

残しすぎの謎・・・放置のまま逃げま~す・・・・・・・・






☆ こちらの作品は、2014/09/24 にUPしましたが、作品を一箇所に纏める為に日付をずらしました ☆





CM: --
TB: --
mimi's world from Ren Tsuruga and Chuehonn Hizuri
Love Letter from RT and CH

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